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逆転ロイヤルズと王朝の来季。
~主力を残留させられない懐具合~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2015/11/07 10:50
優勝を争うために今年の7月に獲得したジョニー・クエトだが、早くもFAで他球団へ去りそうだ。
ロイヤルズの懐具合では、主力を留め置けない。
とまあそんなわけで、2015年の大リーグは一種のハッピーエンドを迎えたといってよいのではないか。ロイヤルズは2年連続でア・リーグのペナントを獲得し、30年ぶりにワールド・チャンピオンの座に就いた。年俸総額1億1300万ドル弱(30球団中17位)のチームとしては満足できる成果だと思う。
だがこうなると、2016年以降のロイヤルズが王朝を維持できるかどうか、という問題が浮上してくる。これは難問だ。GMのデイトン・ムーアも頭が痛いにちがいない。
最大の問題は、今季終了後にFA権を獲得する主力選手が何人かいることだ。なかには、今季後半に加入し、投打の貴重な戦力となったジョニー・クエトやベン・ゾブリストも含まれている。彼ら以外にも、クリス・ヤング、ライアン・マドソン、フランクリン・モラレスといった中堅投手陣がFA権を得る。
クエトは、まずまちがいなくチームを去るだろう。ロイヤルズの懐具合では、彼を手もとに置いておけないからだ。一方、ゾブリストは、なんとしてでも再契約を望みたい選手だ。34歳と高齢だが、野球IQの高さはロイヤルズの戦術にぴったりマッチする。ダニエル・マーフィやハウイー・ケンドリックといった有力二塁手に市場の眼が集まれば、ロイヤルズがゾブリストを引き戻せる可能性は十分にある。
主力の穴を埋める候補には岩隈の名前も。
問題はほかにもある。外野の両翼、アレックス・ゴードン(レフト)とアレックス・リオス(ライト)が、ともにオプション付きの契約を交わしていることだ。来季のゴードンには1400万ドル、リオスには1250万ドルの年俸が用意されているらしいが、それで折り合いがつくかどうか。予測としては、ゴードンを引き留めてリオスをあきらめ、代わりにジェイソン・ヘイワードやデナード・スパンといった「守れて足が速い選手」に手を伸ばしたいところだが、これも金額次第だ。青木宣親→リオスの入れ替えのときも戦力低下が懸念されたが、来季はもっと深刻な事態を迎えかねない。
投手陣も安泰ではない。FAでの流出はもちろん痛いが、ジェイソン・バルガスやグレッグ・ホランドがトミー・ジョン手術を受けたダメージも大きい。とくに、9月まで抑えの切り札だったホランドの処遇がむずかしい。FA権を取得できるのは'17年だが、ウェイド・デイヴィスがクローザーの位置を確立したいまとなっては、今年中に放出する可能性も十分に考えられる。ムーアとしては、そこで浮いた金を先発陣の補強にまわしたいところだろうが、さて適当な駒が見つかるかどうか。
FA市場の目玉となりそうなデヴィッド・プライスやジョーダン・ジマーマンはとても買えないだろうが、ヨバニ・ガヤルドや岩隈久志あたりなら、なんとか手の届く範囲かもしれない。とくに岩隈の投球術は、ロイヤルズ野球と相性がよさそうだ。ストーヴリーグの展開には、これからも注目していきたい。