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短期決戦とラッキーボーイ。
~マーフィの6試合連続本塁打~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2015/10/24 10:30

短期決戦とラッキーボーイ。~マーフィの6試合連続本塁打~<Number Web> photograph by Getty Images

カブスの夢を打ち砕いたマーフィーは、カブスの「ヤギの呪い」のヤギと同じ名前だった。

カーショー、グリンキーに続きアリエータも。

 きっかけは、NLDSの第1戦で、ドジャースの大投手クレイトン・カーショーから本塁打を放ったことだろう。これで勢いづいた彼は、第4戦でもカーショーから、最終の第5戦ではこれまた名投手のザック・グリンキーから本塁打を放ち、NLCS初戦ではジョン・レスターから貴重な花火を打ち上げたのだ。

 そして迎えたNLCS第2戦、マーフィはなんとアリエータまで打ち砕いた。

 ハイライトは1回裏の速攻だ。ヒットで出塁したカーティス・グランダーソンをデヴィッド・ライトが中越え二塁打で還したあと、打席に入ったのは3番セカンドのマーフィだった。1ボール2ストライクのあとの4球目、アリエータは内角低目にカーヴを投じた。球筋を読んでいたのだろうか、左打ちのマーフィは左膝が地面とすれすれになるほど姿勢を低くし、ゴルフスイングのような形で球を右翼席ポール際に運んだ。手首はきれいに返っていた。

 アリエータの失投とはいいがたい。打ったマーフィを褒めるべきだろう。もともとコンタクト能力は高く、二塁打が多いことと三振が少ない(2015年は538打席で38三振)ことで知られていた打者だが、そこに思い切りのよさが加わったことで、第2戦までにポストシーズン合計5本塁打の球団タイ記録(あのマイク・ピアッツァに肩を並べた)を達成し、ポストシーズン4試合連続本塁打(史上8人目。最後に達成したのは'08年のエヴァン・ロンゴリア)も記録できたのだろう。

6試合連続の大リーグ記録、最多まであと2本。

 ところが、サプライズには強烈な続篇があった。舞台をリグレー・フィールドに移した第3戦と第4戦で、マーフィはまたしてもホームランを打ったのだ。第3戦は3回表。打球は右中間のセンター寄り。相手の投手はカイル・ヘンドリクス。そして第4戦では8回表。今度も打球はセンターの頭上を越えた。相手投手はフェルナンド・ロドニー。なんと、ポストシーズン6試合連続本塁打だ。

 正直いって、これには開いた口がふさがらなかった。アメリカの放送も「アブサード(神がかり)」とか「サイエンスフィクション」とかいった賛辞を連ねていたが、ポストシーズン6試合連続本塁打は、'04年にカルロス・ベルトラン(当時アストロズ)が作った5試合連続を更新する見事な大リーグ記録だ。さらにいうと、ポストシーズン7本塁打(9試合)は二塁手としての大リーグ新記録。あと1本で、バリー・ボンズやネルソン・クルーズやベルトランと並ぶ(シングルシーズンの)史上最多本塁打数になるし、あと2本打てば、史上単独首位に躍り出る。こうなったら余勢を駆って、一気に新記録達成を狙いたいところだろう。

【次ページ】 マーフィは今季で契約が切れるが……。

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ダニエル・マーフィ
ニューヨーク・メッツ
シカゴ・カブス

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