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ベネズエラで輝いたサブマリン。
元ロッテ・渡辺俊介の「野球人生」。
posted2015/10/18 10:40
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Katsushi Nagao
マウンドを降りる渡辺俊介の表情はどこか、涼しげに見えた。
9月26日、メリーランド州ウォードルフという合衆国東部の田舎町。1勝2敗と後がない状況で迎えた独立リーグ、アトランティック・リーグの地区シリーズ第4戦に先発した渡辺は、5回7安打2失点で降板した。
「……まあこれで、ランカスターでのピッチングは最後になるんだなぁ、と負けた時に思いましたね。去年から一緒になってる仲間とか監督とかコーチとかと野球をやるのもこれで最後か、と」
感傷的になってもいい瞬間である。だが、渡辺はこう言ってとても爽やかな笑顔を見せるだけだった。
「ただ、またこれですぐベネズエラが始まるのか、と慌ただしい感じもします」
39歳の独立リーガーに、休みなどない。
「最後の悪あがきをしてきますよ」
最後の悪あがき、とはもちろん「メジャー挑戦」への“悪あがき”である。
37歳でメジャー挑戦、来年40歳。
「アメリカの独立リーグでアピールするのは今年で最後。(来年)40歳ということになると、ただでさえ厳しいアメリカのチームとの契約が、ほぼ可能性ゼロになる。最後でベネズエラで悪あがきして、それでダメならもう、アメリカの野球はきっぱりあきらめようと思う」
渡辺が「メジャー挑戦」をしたのは去年の春、37歳の時だった。あれから2年が過ぎようとしている。ボストン・レッドソックスでのキャンプ中に自由契約となり、アトランティック・リーグに入団。リーグ優勝を果たすと、冬の間にはベネズエラでの冬季リーグにも参加した。
南米特有のにぎやかなスポーツ・イベント。テレビ中継もやれば観客も思っていたより遥かに多かった。野球のレベルも高い。彼が所属したレオネス・デル・カラカスの選手たちはほとんど全員がメジャーの40人枠に入っていた。そんな場所で彼は「この球をメジャーの選手はどう打つのか?」と腕試しに出て、ピッチャーとしては唯一の週間MVPに選出されている。