野球善哉BACK NUMBER
下克上2015は荻野貴司の足が起こす?
ロッテファンが待ち続けた男の復活。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/09 10:30
荻野貴司(右)と清田育宏(左)がチームを引っ張る姿を、ファンは心待ちにしていたに違いない。
西岡が「むちゃくちゃ速い」と絶賛した男。
そんなチームにあって、CSに静かなる闘志を燃やしている選手がいる。
入団6年目のスピードスター荻野貴司である。
荻野は、2010年にドラフト1位で入団。開幕スタメンで即デビューを果たすと、一塁到達4秒台前半の脚力を武器にプロ野球界を席巻した。快足として知られ、当時チームメイトだった西岡剛(現阪神)でさえ「むちゃくちゃ速い」と絶賛したほどだった。
しかしその年の5月のゲームで膝を痛めると、荻野の野球人生にケチがついた。2010年はシーズンを棒に振り、2年目、3年目と苦しい時期が続いたのである。手術した膝は完治したはずだったが、今度は肉離れや脱臼など、故障がついて回った。
最初の離脱が2010年だから、ちょうどロッテが下克上で日本一に輝いた時だ。
そのシーズンの中盤以降、荻野に代わって活躍の場を得たのが、同期入団で仲もいい清田育宏だった。清田は日本シリーズで大活躍し、優秀選手賞に輝いた。同じ右打者の外野手。荻野が意識して当然である。
「僕はアマチュアの頃はずっと西の方のチームにいたので、キヨのことは社会人になるまで知らなかったんですけど、社会人の日本代表選考で一緒になってから仲良くなりました。キヨからは学ぶことばかりで、教えてもらってばかりです。だから、2010年のキヨの活躍は、あいつならそれくらいできるやろと思っていたんで驚くことはなかったんですけど、同じ場所に自分がいないというのは、悔しかったし、情けなかったですね」
スレ違い続けた2人が、ついに揃ってCSへ。
荻野と清田は、その後もスレ違った。
普段は仲が良く「一緒にプレーしたい」と清田も荻野も望んだが、荻野が復帰すると清田が不調になる。逆に、清田が復調すると荻野はけがという日々が続き、2人が揃ってシーズンの佳境を迎えることがなかったのだ。2013年も、荻野がシーズン終盤に肉離れを起こし、チームを離脱。2人には常に距離があった。
今季は荻野がシーズン中盤に故障離脱したが、8月中旬にチームに復帰すると、1番・荻野、3番・清田という理想のオーダーを形成。ようやく2人がチームを引っ張る存在になった。
その中で、CSを迎える。