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下克上2015は荻野貴司の足が起こす?
ロッテファンが待ち続けた男の復活。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/09 10:30
荻野貴司(右)と清田育宏(左)がチームを引っ張る姿を、ファンは心待ちにしていたに違いない。
「ガムシャラに走る気持ちを忘れていた」
荻野は、「どんな舞台なんやろ」と未知の場所への期待感を高めている。そしてシーズン終盤の切迫した戦いを経験する中で、自身の中に忘れかけていた“ある思い”に気がついたという。
「終盤戦の数試合は負けられないという思いでやっていて、いつも以上に足を使って攻撃してやろうという気持ちを強く持っていました。短期決戦のような戦いだったんで、こういう時こそ、足を使った攻撃が重要になってくる、と。
10月3日の楽天戦で初回に出塁して、二盗、三盗を決めたんですけど、その時にふと1年目のことを思い出したんです。1年目にデビューした時の僕は、ただガムシャラに走ってたなって。こういう感じで自分はプレーしていたんやって思い出したんです。けがをしてからは、どこかでガムシャラに走るという気持ちを忘れていたんやなぁって、負けられない試合を戦う中で、そう思ったんです。CSでは、その気持ちをもって、ガムシャラに走りたいと思います」
下克上2015は荻野の足が起こす?
度重なるけがで、見方によっては、期待を裏切り続けている選手ともいえる。
しかし、ロッテファンの多くが荻野を見放さなかったのは、あのデビュー当時の、「足」で相手を恐怖に陥れた鮮烈な姿を忘れられないからだ。
2位日本ハムとは6.5ゲーム、首位ソフトバンクとは18.5ゲームと大きく水を空けられてレギュラーシーズンを終えたロッテにとって、今季のCSの戦いが、そう簡単なものでないことは明らかだ。
だがそうであっても、「1年目のあの時」に回帰した荻野の想いに、CSでの一波乱を期待したくなる。
下克上2015――。
ことしは、荻野の足から何かが起きるのかもしれない。