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なぜ巨人・南アを日本の小兵が倒せた?
ラグビーW杯の“80分間すべて奇襲”!
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byGetty Images
posted2015/09/21 12:00
1トライ2ゴール5PGを決めた五郎丸歩。「歴史を1つ変えたが、この先もっと大きなものを変えてから帰国したい」
主力メンバーを揃えてきた南アだが……。
2015年9月16日。大会規定よりも1日早く、南アフリカは日本戦のメンバーを発表した。
チームリストには、123キャップとなる南アの英雄LOヴィクター・マットフィールドを筆頭に、No8のスカルク・バーガー、107キャップの主将CTBヤン・デヴィリエら、歴戦の英雄が並んだ。
「南アは我々をリスペクトしてきた」
南アのメンバーを見た日本代表のエディー・ジョーンズHCは言った。
「2007年のオーストラリアも、2011年のニュージーランドも、日本戦には主力を温存して、Bチームを出してきた。今回、南アはそうしなかった。我々がやってきたことが、世界で評価され始めているのだ」
世界ランキングで言えば南アが3位で日本は13位(9月16日時点)。ワールドカップ通算成績は南アが25勝4敗で日本は1勝21敗2分、普通なら、どう考えても負けるはずのない相手にも、南アはベストメンバーで臨んできた。
「南アは8月のザ・ラグビーチャンピオンシップでアルゼンチンに負けて、自信を失いかけている。日本にはベストメンバーで臨むだろう」
日本を出発する前のエディーHCの予言は正しかった。
我々は日本が相手でも一切油断していないぞ、というチーム内外への南アの宣言。
だが皮肉なことに、そこに落とし穴があった。
日本のあらゆる奇襲で、受け身に回った南ア。
エディーHC率いる日本は、80分のすべてにわたって奇襲をかけ続けた。
キックオフでは相手の足下にゴロを転がし、世界一を誇る南アFWの高さを無力化させた。
ラインアウトからのモールではバックスの選手が次々と密集に加わり、13人がかりでモールを押し切るトライもあげた。
パシフィックネーションズからウルグアイ代表戦にかけてのウォームアップマッチでは見せなかったサインプレーを駆使し、南アの選手たちにいつもとは違う時間の流れを感じさせた。
対する南アは終始受け身に回っていた。自分たちは日本を相手にも油断していない。そんな思いが、どこか他人任せの空気を生んでいたように見えた。