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成績低迷が引き起こした泥仕合。
ホンダ&マクラーレンで内紛アリ!?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2015/09/13 10:30
会見でメディアからの質問に応える新井康久総責任者。汚名をそそぐには結果を残すしかないのだが……。
本当は「ルノーにも勝っていない」。
新井総責任者は「ICE(エンジン本体)のパワーでは上回っている」と言っただけで、回生エネルギーを含めたパワーユニット全体でのパフォーマンスで、ルノーに勝っていると言ったわけではなかったのだ。
したがって、このこと自体は、それほど深刻な問題ではない。
会見ではその誤解を解くために、新井総責任者がきちんと説明もしている。
「現在のF1マシンにはトルクセンサーがついているし、車速もGPSデータを見ればわかる。回生エネルギーが使える上限は120kwなので、それを差し引けばエンジン本体の馬力が割り出せる。エンジニアならだれでもわかっている数字だと思う」(新井総責任者)
だが、この答えがもうひとつの疑問を生む結果を招くこととなる。
会見後、イギリス人ジャーナリストの数名と話す機会があった。その中の数人は、何年も前からF1で仕事をしているベテランで、マクラーレンとも親しい。
そして、その親しいチーム関係者ですら「ICE単体でもルノーには勝っていないと言っている」というのである。
マクラーレンとホンダの間に食い違いが!?
もし、イギリス人メディアが言っていることが本当であれば、問題は深刻だ。
というのも、一連の批判はイギリスのメディアが、日本のホンダをバッシングしたことではなく、マクラーレン・ホンダの内部で、現状に対する認識が異なっていることを意味するからである。
しかも、それはデータを読み取るというエンジニアリングとして、極めて基本的な部分においてである。
仮にイギリスメディアが言うように、新井総責任者が説明していることが真実でないとすれば、そのような人物がホンダのF1活動のトップに立ち続けているべきではないだろう。
イタリアGPの翌日に、イギリスではタイムズ紙、テレグラフ紙、デイリー・メール紙など大手新聞と、スカイスポーツなどが「マクラーレンがホンダの社長に新井総責任者の辞任要求を迫った書簡を送った」と一斉に報道したのも、自分たちが得ている情報のソースを信頼し、新井総責任者の現状認識の甘さを指摘したからだろう。