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ホンダを29年ぶりのモナコGP勝利に導いたフェルスタッペンと、モナコ6勝のレジェンド、アイルトン・セナの共通点とは
posted2021/05/28 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
「H」マークをノーズに刻んだF1マシンが、モナコGPで、トップでチェッカーフラッグを受けた。
「最後のモナコ、特別なモナコで優勝できたことを、ホンダのスタッフのひとりとして、非常にうれしく思っています」
レース後、田辺豊治F1テクニカルディレクターはそう言って、ホンダにとって92年以来、29年ぶりのモナコGPの美酒に酔いしれた。
「モナコという、自分たちの生活からかけ離れた世界が広がった街でやるこのグランプリには、特別な雰囲気があります。さらにわれわれホンダにとっては、セナと数々の優勝を経験したグランプリ。私も当時、現場にいたわけですが、そういう過去の記憶もあり、ほかのグランプリとは大きな違いがある一戦です」
10年間という短いF1生活で通算41勝を挙げたセナが最も多く勝利した場所が、モナコだった。87年にロータス・ホンダでモナコGP初優勝を果たしたセナは、89年から93年まで5連覇し、モナコで通算6勝を挙げた。
近年レースが増え、さまざまな記録が更新されているが、現役最強といわれるルイス・ハミルトンですらモナコでは3勝しか挙げていない。
アイルトン・セナの凄まじさ
そのセナの6勝のうち、93年を除く5勝をセナとともに手にしたのがホンダだった。そして、その5勝のすべてをロータス・ホンダ時代から間近で見てきたのが、田辺だった。その田辺はセナのモナコでの強さをこう分析する。
「もちろん、速かったということは言うまでもありませんが、限界を見極めた上で、さらに限界ギリギリまでプッシュして、それに合わせてクルマをセットアップして速く走っていた」
コースがガードレールに囲まれたモナコの市街地コースは、それだけでドライバーにとって大きなプレッシャーとなる。だが、そのガードレールを気にしてアクセルを緩め、走行ラインを変えれば、速く走ることはできない。しかも、わずかでもミスを犯せば、命取りになる。それはリタイアに直結するレース中だけでなく、フリー走行や予選を含めた週末を通してだ。フリー走行でクラッシュすれば、マシンを理想的にセットアップさせることはできず、予選でミスすれば、スタートポジションを失うからだ。