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ハミルトンはセナの記録に並べるか?
ベッテルとの攻防に注目の日本GP。
posted2015/09/24 13:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
「やっぱり、プロストと接触した、鈴鹿でのあのレースだよ」
あこがれのヒーローであるアイルトン・セナのベストレースは何かと尋ねられたハミルトンは、'93年の雨のドニントンパークとともに、少し微笑んで'89年の日本GPを挙げた。
「フロントウイングがボロボロになりながらも走り続け、ピットインしてトップの座を明け渡しても諦めないで最後まで戦い、再び逆転してトップでチェッカーフラッグを受けた鈴鹿でのあの走りは、僕はいまでも忘れることができない」
前戦シンガポールGPで、セナの生涯レーススタート数である161戦(グランプリ参戦数は162回だが、'84年サンマリノGPは予選落ちしてレースはスタートしていない)に並んだハミルトン。もし優勝すれば、セナの通算勝利数にも並ぶという一生に一度のチャンスだった。
しかも、7グランプリ連続でポールポジションを獲得していたハミルトンには、もうひとつセナが持つ連続ポールポジション獲得記録にも並ぶという奇跡が待っていた。
しかし、すべての期待は突然の失速によって打ち砕かれた。
それでもレース後のハミルトンに、記録を達成することができなかったフラストレーションは感じられなかった。
「今回のレースに勝てばセナに並ぶとか、そんなことは初めから考えていなかった。いずれはその記録に並ぶだろうからね。いつ並ぶかではなく、並ぶことに意味がある」
13戦中7勝しているハミルトン。
今年の日本GPの最大の焦点は、ハミルトンがセナのベストレースと語った鈴鹿で、セナが持つ41勝に並ぶことができるかどうかである。
昨年のチャンピオンであるハミルトンにとって、2015年は昨年以上に充実している。
「レースを始めて22年間、いろんなことを学んできた。いまだにうまくいかないときもあるけど、今年はその中でももっともうまくレースができていると思う。恐らく、これが僕のベストシーズンだと言ってもいいくらいだ」
今シーズン13戦を終えて、7勝を挙げているハミルトン。
今年もタイトル争いの主役を演じているが、ここに来て雲行きが怪しくなってきた。前戦シンガポールGPの失速の原因がいまだに究明されていないからだ。