松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

思い通り打てずとも優勝は争える。
PO初戦を突破、松山英樹の自信。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2015/09/01 11:25

思い通り打てずとも優勝は争える。PO初戦を突破、松山英樹の自信。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

最終日の16番。ラフからのリカバリーを観衆も固唾を飲んで見守っていた。優勝争いではなくとも、松山英樹のプレーから目を離そうとするギャラリーはほとんどいない。

寂しい練習場で夕暮れまで練習を続けた松山。

 残念ながら、優勝争いには届かなかった。前半でスコアを伸ばせなかった時点で「厳しい」と実質的な敗北を認め、13位どまり。「この順位で満足できるとは思えない」と言いながらも、表情はどことなく明るくなっていた。それは、彼のゴルフに光明が差し込んできた証だ。

「ここ3~4戦と比べれば、良かったのかな。ショットもいい感じが出るところがあった」

 前日は選手の姿がまばらな寂しい練習場で、進藤大典キャディにクラブを頭上でかざしてもらいながら、夕暮れまでショット練習に励んでいた。そうやって積み上げてきた努力の成果が、少しずつでも実戦で感じられ始めたことが、彼の表情を明るくしていた。

 プレーオフ最終戦まで進むことだけが目標ではないと彼は言う。

「優勝を目指すことが大事。そのために何をしなきゃいけないのか」

 それを模索し、見つけ出すことがこれからの彼の課題になる。

松山は2年前の「1%」発言を覚えていた!

「ねえねえ、最近の松山くんは勝利への小さな可能性を信じられるようになったよね?」

「そうっすかねえ?」

「うんうん、だって、2年前のカナダのときは、今回と同じような状況で『優勝の可能性は1%しかない』って言ってたんだよ」

 そんな小さなやり取りを松山が覚えているはずがないと思って説明していたら、「覚えてます。うん、そう言ったっすけど……」

 そこから先は何やらゴニョゴニョと口ごもっていたが、そんなことより何より、私には「覚えてます」が驚きだった。毎週毎日、取材に対応し、たくさんの言葉を発するスター選手が、2年の歳月を経ても覚えているというのは、何かが気になり、心にひっかかっているからに他ならない。

「1%」は本当に「ほとんどない」だったのか。実は「結構あった」のではないか。そんな自問自答を心のどこかで続けていたからこそ、いまだに彼の記憶に留まっているのだろう。

【次ページ】 「ひっかかり」は「取っかかり」になる。

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