青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER

世界が見放しても最大限の敬意を。
超人ウッズを仰ぐ石川遼の純真。 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byAP/AFLO

posted2010/11/12 10:30

世界が見放しても最大限の敬意を。超人ウッズを仰ぐ石川遼の純真。<Number Web> photograph by AP/AFLO

このテレビマッチの時に、今季優勝無しのウッズは、約5年間守り続けてきた世界ランク1位の座を明け渡したばかりだった。石川も、残り4試合で賞金ランキングトップとの差である約4000万円を追う立場となっている

 あれから約1年が経った。

 世界でもっとも尊敬を集めるアスリートだったタイガー・ウッズにとって、今年はあらゆる物事が激変した1年だったに違いない。

 次々と露見するスキャンダルに温かな家庭を失い、数多くのスポンサーが離れていった。不倫騒動は肝心なゴルファーとしての活動にも暗い影を落とし、今季はプロになって初めて米ツアー未勝利に終わった。10月31日付の世界ランキングでは281週守ってきた世界1位からついに陥落。ウェストウッドにその座を明け渡したのだった。

 しかし、ウッズのプレーが精彩を欠き、積み上げてきたパブリック・イメージがどれほど地に墜ちようとも、石川遼がウッズに抱く“プライベート・イメージ”は揺らぐことがなかったようだ。

試合よりも緊張感漂ったウッズとのテレビマッチ。

 11月1日に石川は横浜CCでウッズとテレビマッチの収録を行った。昨年の全英オープン予選ラウンドやプレジデンツ・カップの2度のダブルス戦で一緒にプレーしており、対戦は初めてではなかったものの、今回も緊張した様子がありありと見て取れた。

 試合ならば互いのプレーに集中して干渉する必要はないが、テレビマッチならにこやかに言葉を交わすことも必要になる。それが余計に緊張を誘う要因にもなっていた。

「練習からついつい見入ってしまって、見ることができるだけで幸せ。最高です」

「スイングも美しいし、本当にゴルフを極めているという感じがする。彼のように世界中の人々を魅了するプレーをしてみたい」

 そんな言葉もまったく社交辞令でないことは、試合の時以上に肩に力の入った石川の姿を見れば明らかだった。

“偶像”のスキャンダル報道に胸を痛めていた石川。

 昨年末、ウッズの不倫スキャンダルが発覚した直後、コメントを求められた石川は「僕は何とも思いません」と浮かない表情で言葉を濁した。しばらくしてウッズが無期限での出場自粛を表明した時も、感想をたずねられて一度は答えるのをためらい、報道陣の再度の求めに応じて渋々口を開いたのだった。

「タイガーはものすごくストイックなイメージがあったから驚きました。タイガーのプライベートはまったく知らなかったので、タイガーファンの1人としてびっくりしてます」

 表情を硬くしてコメントする姿には、自らの偶像を壊されまいと必死に耳をふさぐような痛々しさも感じさせたものだ。

 その後も石川の願いとは裏腹にウッズのスキャンダル報道は止むことなく、石川も新聞やインターネットを通じてそれらの情報を目にしてきた。抱いていたイメージとのギャップに幻滅した部分も少なからずあったはずだが、石川は「僕も気をつけないとなぁ」などと軽口を叩くことはなかった。

【次ページ】 「あこがれの選手という言葉だけでは片づけられない」

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