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A代表経験で加速する遠藤航の成長。
思い出された“先代”遠藤の言葉。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/08/18 10:50
同じく昇格1年目の山形、松本が降格圏で苦しむ中、J1中位につける湘南の中心選手に成長した遠藤航。「東アジア杯の数少ない収穫」と言われ、A代表にも定着なるか。
ハリルホジッチ「お前のプレーは40歳に見える」
学んだことをすぐに試合に活かす。
遠藤のサッカーインテリジェンスの高さを示すものだが、疲労がある状況でもいつも以上に落ち着いてプレーしていたのが印象的だった。ハリル監督からは「お前のプレーは40歳に見える」と言われたというが、この日の遠藤はまさにそんな感じだった。
「落ち着いてプレーできたのは、A代表を経験し、アジアの戦いを経験したことで気持ち的に余裕ができたからです。ボールを持った時、より周囲が見えるようになった感が今日はありました」
そう語る表情には、A代表で経験した8日間の充実ぶりがうかがえた。
遠藤にとって大事なのは「これから」だ。今は帰国して間もないので、東アジア杯で体感した激しさや強さ、スピードがまだ生々しく体に残っている。つまり、プレーの質は代表レベルを維持できる。だがここから数週間が経過し、Jリーグのレベルに慣れてしまえばその感覚は失われてしまいがちだ。現在の意識を持続させられるかが、トップランナーになれるかどうかの分水嶺になる。
「プレー中、余裕があるのはいいことですし、東アジアでいい経験ができたのでいい意味でJリーグに慣れないで、そのレベルを常に維持してプレーすることが大事かなと。そこはこれからも意識していきたい」
22歳でこの意識の高さ。慢心は、まったく心配がなさそうだ。
遠藤保仁「A代表は自分を成長させてくれる場所」
その様子は、ロンドン五輪代表の清武弘嗣がA代表を経験することで目覚ましい成長を遂げ、五輪チームの中心選手、A代表常連に上り詰めた姿とも重なる。遠藤自身も「今度は海外組のいるA代表に入りたい。代表に入り続けてプレーしたいという気持ちが強くなった」と、A代表定着に意欲的だ。そんな遠藤の姿を見ているとある選手の言葉を思い出した。
「A代表は自分を成長させてくれる場所」
152試合の国際Aマッチ出場数最多記録を持つ遠藤保仁の言葉である。
今、遠藤はこのことを実感しているのだろう。一度味わった日本代表という刺激は忘れられない。だが代表に居続けるためには、クラブで質の高いプレーをしつづけることが必要になる。清水戦では代表で得たプレーをさっそく見せてくれたが、遠藤の意識にすり込まれ、体感したものがピッチで体現され、凄味を見せるのはまさにこれから。偉大な先輩を超えるような新しい「遠藤像」を見せてくれるはずだ。