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長谷部誠、ドイツ9年目は「質」の年。
キャリア最高の昨季を超えるために。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2015/08/14 11:00

長谷部誠、ドイツ9年目は「質」の年。キャリア最高の昨季を超えるために。<Number Web> photograph by AFLO

8月8日のドイツ杯1回戦は3-0で勝利。長谷部はフル出場し、2点目をアシストして勝利に貢献した。

30歳にして自己最多出場だった昨シーズン。

 昨シーズンの長谷部は、ドイツに来てから8シーズン目にして、1シーズンあたり最も多くのリーグ戦に出場した。

 30歳で開幕を迎え、31歳でシーズンを終えた昨シーズンの長谷部は、33試合に先発した。イエローカードの累積により出場停止となった1試合以外のすべてで身体を投げ出し、チームを引っ張ったのだ。衰えなんて、とんでもない。進化している。そう感じさせるシーズンだった。

 だが、8シーズン目で残した成績を超えるのは簡単ではない。昨シーズンの長谷部は怪我や体調不良で欠場した試合は一つもないわけで、昨シーズンと同等かそれ以上となると、かなりハードルが高いことがわかる。

 となると、今シーズンは昨シーズンと同じようなパフォーマンスを維持することが目標となるのだろうか。違う。長谷部にとって、現状維持というのは甘い考えに過ぎない。彼はこう断言している。

「少しでもプレーの質を」

「昨シーズン、ずっと自分が試合に出してもらっているなかで、コンディションを調整することに意識が向きすぎた部分が少なからずありました。『怪我をしないように』と考えていくことで、自分がどういうプレーをしたらいいのか、あまり重きをおけなかった部分がある。だから、今シーズンは、少しでもプレーの質を上げていきたいと思っているんです」

 サッカーは激しいボディコンタクトと多くの運動量を必要とするだけに、選手にとって齢を重ねていくことは、ともすれば肉体の衰えと向き合う作業にもなる。歳を重ねたあとに低調なプレーを見せれば「衰えた」と指摘される。だが、良いパフォーマンスを続けていけば、重ねた年齢は称賛されるべき一つの要素へと変わる。

 周囲の喧騒と好奇の目をよそに、さらに前に進むためのテーマを掲げる。長谷部らしいといえば、そこまでだ。しかし、必ずしも自分の望み通りに進んでいないプレシーズン中に、そのようなことを語る。そこに、まるで木が年輪を重ねるように育んできたプライドと経験と、成長のあとが見てとれるのだ。

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