マインツのサイドには、スピードのある選手が4人。

　ハイロはモナコ戦とラツィオ戦で、クレメンスはサンテティエンヌ戦とラツィオ戦で、それぞれゴールを決めている。もちろん彼らとの争いには、武藤に加えてハンブルガーSVからやってきたバイスターも食い込んでくる。ポジションをめぐって熾烈なレギュラー争いが繰り広げられている状況について、シュミット監督はこう解説する。

「ハイロは昨シーズン、セビージャからやって来た時は完全にフィットした状態ではなかった。ブンデスリーガに慣れるまでに半年ほど必要としたが、調子が良い今は、彼の速さが君たちにも見て取れるだろう。

　クレメンスは昨シーズン怪我していたが今は調子が良く、彼も速い。だから、ヨシ（武藤）を加えてこの速さがある3人の選手を同時にどうやって起用するのか考えていかなければならない。ヨシがフォワードに入る時もあるだろうし、誰かがベンチから入ることもあるかもしれない。ある試合では90分プレーして、次の試合では60分といった感じで、ローテーションをすることもあるだろう。

　うちには他にもスピードのある選手がいる。（ラツィオ戦で途中から左MFに入った）バイスターもとても速い選手だ。彼を入れると4人になるが、一年を通して全員が必要になる」

昨季終盤から着実に準備をしてきたクレメンス。

　クレメンスは若くしてケルンで脚光を浴びてからすでに5年がたとうとしているが、伸び悩んでいる感は否めない。実際、昨シーズン途中にマインツにやってきてからの半年間、そのポテンシャルをほとんど発揮していない。それでも、彼は今シーズンの巻き返しのためにコツコツと準備をしてきた選手の一人だ。

　昨シーズン最終節の3日前の練習でのこと。すでにマインツの1部残留は決まっていて、EL出場権争いからは脱落していた。モチベーションを保ちづらい状況で、多くの選手の目から生気が失われていた。

　しかし、クレメンスは違った。練習が終わったあとにシュミット監督を呼び止め、誰もいなくなったピッチの上で、どんなプレーをして、どういう動きをするべきかについて確認し、意思疎通を図っていたのだ。

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