ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
「今度の試合もプレーするだろうね」
武藤嘉紀の開幕戦起用が濃厚!?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2015/08/07 10:40
英語を流暢に話し、スペイン語でも意思疎通が可能。そしてドイツ語も習得の意思を見せる「コミュニケーション力の怪物」武藤嘉紀に言語の壁はない。
強豪との対戦では、武藤のスピードが必要になる。
シュミットが口にしたのは、真意をはぐらかす答えでもなければ、2人のうちのどちらがレギュラーに近いのかを明かすものでもなかった。先ほどまで武藤の話をしていたため、まず、彼はニーダーレヒナーの特長をこう説明した。
「ニーダーレヒナーがセンターフォワードに入れば、上手にポストプレーをしてくれるし、(チームメイトが)セカンドボールをシュートに持ち込むこともできる」
その上で、指揮官はケルンとバイエルンという2チームとの対戦を例に挙げて、武藤の起用意図を明かした。ケルンは守備は堅いが、マインツがボールを保持して戦うことができる。一方でバイエルンとの試合では、ドイツのどのチームもボールを支配された状況で戦うことになる。
「例えば、アウェーでバイエルンと対戦するとする。私たちはハーフウェイライン付近から守備をはじめ、ヨシが9番(センターフォワード)の位置に入る。ボールを奪ったらすぐにヨシにパスを出して、ヨシがゴールへ向かうわけだ。
ただ、ホームでケルンと対戦するようなときには、ニーダーレヒナーがトップに入り、後方からのボールを彼がヘディングでサイドに落として、そこへハイロ、ヨシ、クレメンスなどのサイドMFがボールを受けてから攻撃するのもいいと思う。だから、ニーダーレヒナーとヨシという両方のタイプのフォワードがいるということは、私たちがオプションを持てるという意味で、とても重要なのだよ」
講義はかなり具体的なものに及んだ。気がつけば7分近くがたっていた。
「今度のリーグ戦でもプレーすることになるだろうね」
そんな話を受けて、現在のマインツの選手たちを見回してみる。その顔ぶれの中に、武藤ほど複数のポジションで力を発揮できる選手はいない。武藤はマインツにおいて、唯一無二のポリバレントな存在なのだ。
サイドのMFとしても、フォワードの選手としても、レギュラー争いの好位置につけている。野球界で流行の言葉でいえば、武藤は二刀流に挑む選手なのかもしれない。あとは、どれだけ長い時間出場できるかどうか。その点について、指揮官はどう考えているのだろうか。そのヒントは意外な形でもたらされた。
シュミットの講義が終わり、録音していたICレコーダーのスイッチを切ろうとしたときのことだった。シュミット監督はこちらを見て、笑顔を浮かべてこう続けた。
「まぁ、ヨシがこのまま良いプレーをしていてくれれば、今度のブンデスリーガでもプレーすることになるだろうね」
マインツの今シーズンの初めての公式戦は8月9日、そしてリーグ初戦となるインゴルシュタットとの試合は8月15日に行なわれる予定だ。