なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「キーマン?」に首を振った岩渕真奈。
なでしこの切り札の“余裕と太腿”。
posted2015/07/01 11:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
AFLO
オーストラリア戦前日、岩渕真奈ははにかんでいた。試合では自分がキーマンになる予感はしないかと尋ねてみた時のことだった。
彼女はエクアドル戦、オランダ戦と続けて後半から途中出場しており、流れを変える役割を担っていることは明らか。試合展開次第では、彼女の得点が大きな重みを持つだろうということも容易に想像がついた。岩渕は瞳を大きく見開き、口を閉じ、はにかみながら首を数回横に振った。そしてしばらく間を置くと、意を決したように言葉を発した。
「でも大切ですよね途中から入る選手……って最近思うようになったっていうか。本当にみんなが頑張ってるなかで、フレッシュなので大切な役割を担っていると思うし、まあ、そうですね。途中から出て試合を決められるような活躍ができたら良いかなと思います。
(豪州は)攻撃陣が若くてフレッシュでスピード感があるなというのが一番の印象で、本当に体力勝負じゃないですけど、暑さが鍵になってくるのかなと思うので、途中から入るならそれなりに頑張らなきゃいけないなと思います」
この時は得点にこそ言及しなかったが、フォワードとして果たさねばならないことは分かっているとでも言いたげだった。
「おいしいとこだけ頂きました」
果たして、岩渕はヒロインになった。豪州戦の72分、オランダ戦と同じく大野忍に代わって2トップの一角として出場。直後から積極的な仕掛けからシュートも放ち、暑さで疲れ果てて足の止まった豪州に襲い掛かった。
そして待望のシーンが来る。岩渕のシュートがディフェンダーにブロックされて、左CKを得る。宮間あやのキックを熊谷紗希が競り、宇津木瑠美のシュートが相手にあたってこぼれたところを岩清水梓がつないで、岩渕の足元に転がった。
「キターって思って(笑)。で、まあ(利き足の)右で振れたので良かったですけど、本当にみんながこぼれを頑張ってつないでくれたおかげなので、はい。みんなに感謝したいです」
そこにいたから決められた。そんなゴールだった。だが、少し反省は残る。
「自分がシュートを打ってブロックされてからのコーナーだったんで、欲を言ったらあのシュートシーンで決めたかったですけど……」
そしていたずらっ子のように続ける。
「でも本当にみんなが90分頑張ってくれた中で、おいしいとこだけ頂きましたけど、本当にチームとして勝ててよかったなと一番に思います」