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名牝の子孫たちが集結した安田記念。
種牡馬を宿命づけられた馬が勝つ?
posted2015/06/06 08:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
上半期のマイル王を決める第65回安田記念(6月7日、3歳以上GI、東京芝1600m)。血統表を眺めているだけでもワクワクするほど、超良血の実力馬がズラリと顔を揃えた。
「血統」という視点から、まず父系を眺めると、「やっぱりな」という感じがする。出走馬17頭のうち6頭の父がディープインパクトで、4頭がダイワメジャーだ。「中距離GIの常連」と言えるこれら2頭が半数以上を占めている。
では、母系はどうか。こちらは、男勝りの女傑が母だったり、懐かしの名牝が祖母だったり……と、父系よりずっとバリエーションに富み、豪華さでも負けていない。
なかでも、血統表を見て「これは種牡馬になるために生まれてきた馬だな」と思わせられた良血中の良血は、昨秋のマイルチャンピオンシップで鼻差の2着と涙を呑んだフィエロ(牡6歳、父ディープインパクト、栗東・藤原英昭厩舎)である。
母の全兄が、名馬ロックオブジブラルタル。
母ルビーの全兄に、芝1400mから1600mの欧州GIで7連勝を飾り、種牡馬となったロックオブジブラルタルがいる。半姉にはアイルランドのGIIIを勝ったプレシャスジェム(父サドラーズウェルズ)がおり、本馬が母にとって初の牡の産駒である。父がディープインパクト、500㎏前後の均整のとれた馬体、しなやかな走り……とすべてが上質で、あと種牡馬入りに必要なのは、GIの勲章だけである。
重賞初参戦となった昨春のマイラーズカップでワールドエースの2着になった走りを見て、すぐにでもGIを勝つと思ったのだが、今に至るまで重賞を勝てずにいる。
管理する藤原調教師は、血統的背景から必ず走ると確信し、成長を待ちながら、じっくり育ててきた。勝ち切れないレースがつづいたのは、馬齢的には古馬になっていても成長途上だったからだろう。
「しかし、完成の域に達したので、これからはつねに勝負というつもりでやっていきたいと思います」と藤原師。
遅咲きの大器が、今まさに本格化しようとしている。
手綱をとるのは戸崎圭太。調教師・藤原-騎手・戸崎のラインは、3週前のヴィクトリアマイルを強烈な末脚で差し切ったストレイトガールと同じである。
世界的良血馬の初重賞勝ちがGI制覇となるか、注目必至だ。