セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
CBコンビの離脱と走れないトッティ。
“元優勝候補”ローマ、目標は2位。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/05/13 10:50
勝てば2位浮上となる4月19日のアタランタ戦もドロー。指揮官ガルシアは「怒りしかない。我々はいいプレーをしなかった」と吠えた。
CBコンビが2人とも使えず、バランスが崩壊。
それでも、まだスクデットレースでの挽回は十分可能だった。ローマの戦力と選手層はユーベと十分互角、と思われていたからだ。
誤算は後方から生じた。
堅固な守備をチーム作りの基礎に置くガルシアにとって、センターバックの能力はかなり重要だ。昨季の躍進は、一対一の守備と攻撃への素早い切り替えに抜群の巧さを見せたDFカスタンとDFベナティアのCBコンビあったればこそだった。
高額を積まれたDFベナティアが夏にバイエルンに引き抜かれたのは仕方ないにしても、昨季40試合に出場した、もう一人の大黒柱カスタンが開幕直後に戦線離脱し、後に難病を患っていることが判明、シーズンを通してまったく使えなかったのは想定外だった。
加入1年目コンビのDFヤンガエムビワとDFマノラスが後釜に入ったが、セリエAのリズムと指揮官ガルシアが求めた最終ラインからの組み立てに不慣れな2人は、いざボールを持っても、縦ではなく、安全策をとって横方向へ互いに譲り合った。
この初手のズレが、タレント揃いのはずの中盤からもリズムを奪った。
守備に追われ、中盤の創造性が犠牲に。
CBコンビに一対一の不安が残る以上、中盤はより最終ライン近くまで下がって、彼らと両サイドバックをケアする回数を増やす必要がある。守備が本職のMFデロッシやタフネスを売りにするMFナインゴランはともかく、技巧派のMFピアニッチまで反則覚悟の守備に忙殺されたのは、攻撃フェーズにおいて明らかな損失だった。ピアニッチの天賦の才は発露する機会を失った。
中盤4人目の選手として、極上のリンクマンだったMFストロートマンがいれば、話は多少違っていたかもしれない。そのストロートマンは晩秋のトリノ戦で左膝前十字靭帯損傷から8カ月ぶりに復帰したが、年明けに同じ左膝を再び悪化させ、今季の戦力にはついぞなりえなかった。
戦術4-3-3と中盤から前の顔ぶれは昨季とほぼ同じでも、選手たちは「チームは去年と変わってしまった」と口々にこぼした。ローマのチームバランスは、後方から変わってしまったのだ。