サッカーの尻尾BACK NUMBER
グアルディオラはCLを諦めたのか。
メッシに屈した試合後の微笑と言葉。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byFC Barcelona via Getty Images
posted2015/05/07 11:40
試合後のグアルディオラ(左)とルイス・エンリケ。スピードを誇る選手のリベリーやロッベンを怪我によって欠いたことも敗因に挙げざるを得なかったグアルディオラ。
グアルディオラ「メッシを止める術はない」。
メッシについて聞かれた指揮官はこう答えている。
「メッシを止める術はない。プレーを制限することはできても、才能というものは止められないんだ」
統制されたバイエルンの守備組織に数メートルのスペースが現れた。
ネイマールがエリア内で倒され、主審に抗議していた。バルサの選手はPKだと主張し、バイエルンの選手は、シミュレーションとして主審に詰めよる。その隙をついて、ノイアーが素早く左サイドへボールを展開。しかしノイアーの切り替えの速さと繋ぐ意識が、この場面では裏目に出た。
余裕がないままに受けたベルナトは対面のダニエウ・アウベスにボールを奪われ、パスを受けたメッシがゴール右隅に決めた。
「あれで気持ちが落ちてしまった」とグアルディオラが言うように、バイエルンのプレーのインテンシティは落ち、抑えられていたブスケッツがフリーで前を向けるようになる。ボールの出所を押さえていた蓋がひらき、起点がバルサに戻った。
グアルディオラを打ち倒したのは、自らが育てた“怪物”。
2点目も、ブスケッツからラキティッチへボールが通り、それがメッシへと渡ったものだ。
1対1になってしまえば、グアルディオラが言うように、才能がものをいう。メッシに切り返しで裏返されたボアテンクに責任はない。「プレーを制限し続け、できるだけプレーに関わらせないようにすること」としたペップのメッシ対策は崩れ去った。
ノイアーを前にふわりと浮かしたメッシのシュート、何度も見てきたその弾道を、グアルディオラは遠くベンチからどんな想いで見つめていただろう。
メッシのふたつのゴールは、バイエルンを意気消沈させ、バルサに活力をあたえた。その後、カウンターからネイマールが決定的とも言える3点目を決めている。
「1-0まではよかったが、そのあと統制を失ってしまった」
グアルディオラは悔やんだ。
その均衡を破ったのは、かつて彼自身がその手で作り上げたモンスターだった。