ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
ドイツでの最終戦は大団円になるか。
クロップが母国と日本人に残した物。
posted2015/05/08 10:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
「もう一度、ボルジーク・プラッツであのバスに乗りたいね」
そんなメッセージをクロップが発したのは、今シーズン限りでドルトムントの指揮官を退くと発表した記者会見でのことだった。
ボルジーク・プラッツというのはドルトムント市内にあるクラブ発祥の地で、ドルトムントの優勝パレードは、いつもここからスタートする。
クロップがそう語ったのは、バイエルンとのドイツ杯準決勝を控えていたからだ。
そして4月28日に行なわれた準決勝では、劣勢を強いられながらも1-1のままPK戦に進み、バイエルンの選手が4人連続でPKを失敗して勝利をつかんだ。
試合後、香川真司にクロップの示したメッセージについて問うと、こんな答えが返ってきた。
「みんなが感じていると思いますが、最後としてはみんなが決勝で優勝して、良い形で終わりたいというのがあります」
クロップの足跡をたどる上で、この試合前のやりとりこそが彼の手腕を象徴するものだ。
タイトルとともに、ドイツサッカーを進歩させた功績。
ドルトムントで7年目を迎えたクロップが残した功績は、ブンデスリーガ2連覇、ドルトムント史上はじめてのリーグとドイツ杯の2冠達成、そしてCL準優勝になる。'10-'11シーズンに優勝したチームは平均年齢が24.21歳で、リーグの歴史上で最も若いチームによる記録達成だった。
わかりやすい数字はこれだけだが、実は見逃せない功績がもう1つある。それはドイツサッカー界のレベルアップのきっかけを作ったことだ。
そのターニングポイントが、'12-'13シーズンのCL決勝で史上初めてドイツ勢の対決を実現させたことだ。一時は破産の危機にひんしていたドルトムントを引き上げると同時に、緊張感のあるライバル関係によって、バイエルンを過去にないほど強くしたのだ。