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幕張の空にエアレースがやってくる。
唯一の日本人・室屋義秀の「総力戦」。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byJoerg.Mitter/Red Bull Content Pool
posted2015/05/03 10:30
空中での最高時速は350kmを超えるエアレース。今年はBSなどで全レースが放送される予定で、より多くの人が目にすることだろう。
ベスト8に終わるも「今まででベスト」。
アブダビ大会で、室屋は予選を3位で通過。記者会見にも招かれるなど一躍注目を浴びたが、決勝では自己ベストに1秒以上及ばず、ベスト8で敗退を喫している。さぞかし肩を落としているだろうと思いきや、彼はきわめて前向きな口調でアブダビ大会を振り返った。
「フライトのクオリティーは、昨日の予選からずっといい状態をキープすることができました。(タイムアタックの直前に)風が変わったので僅かに届きませんでしたが、データ的には、ほぼベストに近い状態で飛んでいたことがわかっている。コース取りやGのデータから見た場合には、(優勝した)ポール・ボノム並にコンスタントに飛べていました。機体の性能をどう引き出すかという点に関して言えば、多分今まででベストのレースができたと思います」
従来型をはるかにこえる性能の新機体「Edge 540 V3」。
先頃、室屋はベンジャミン・ラブに続く、頼もしい援軍を得た。新たな機体を導入したのである。本拠を構える飛行場「ふくしまスカイパーク」で「Edge 540 V3」をお披露目した際、室屋は新たな武器の威力をこう解説している。
「機体の基本構造は同じですが、カーボンなどをより良いものにしたことで、重量が50kgほど落ちています。(それに加えて)空力を洗練させたり、細かい部分を改善しているので3%ほど性能が上がっています。
タイムに換算すれば、1秒から1.5秒は順当にぺースが上がるくらいの性能アップに匹敵するし、1秒速くなるとレッドブル・エアレースではファイナルに残れるくらいになってくる。非常に性能が良いので(今後の戦いが)面白くなりますね」
最新型の機体に比べて、直線での最高時速が30kmも遅いというハンディキャップを抱えていた室屋にとっては、何よりの吉報となる。
しかも室屋は「Edge 540 V3」の導入に当たって、独自の工夫もこらした。たとえば機体全体を塗料でペイントする代わりに薄いフィルムでコーティングし、可能な限りの軽量化を実施。空力性能を高めるために、キャノピー(コックピットを囲む風防)の形状をぎりぎりまで絞り込むことまで行なっている。さらには新たなキャノピーに収まるように、ヘルメットも一回り薄いものを用意するという力の入れようだ。