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新体操・個人でリオ五輪に挑む!
ロシアから逆輸入の「美しい日本人」。
text by
椎名桂子Keiko Shiina
photograph byNaoto Akasaka
posted2015/04/29 11:20
昨年の世界選手権(トルコ)では、個人総合決勝まで進出し、16位にまでくい込んだ早川さくら。今秋の世界選手権(シュツットガルト/9月)での雪辱なるか。
ワールドカップで好成績を出し始めた2人。
まず2015年3月のワールドカップ・ポルトガル大会で、皆川夏穂が個人総合8位になった。日本の個人選手のワールドカップでの初入賞という歴史的快挙である。その翌週のワールドカップ・ルーマニア大会では、今度は早川さくらが個人総合9位。この2人は2015年シーズン、実に幸先のいいスタートを飾っているのだ。
そして4月19日。「世界新体操選手権大会・日本代表選考会」に出場するために、2人はロシアから帰国。今シーズンのワールドカップから数えると4週連続の大会出場というハードスケジュールではあったが、早川は4種目を大きなミス無くまとめて1位通過。皆川は、後半種目になって疲れからミスが出てしまい、順位こそ3位になってしまったが、日本代表の座は既に確保。2位に入ってきた17歳の河崎羽珠愛(うずめ/イオン)が最後の枠に加わっての、3人での世界選手権出場となった。
この代表選考会で2人が見せた演技は、その場に居合わせた新体操関係者や観客にとって感慨深いものだった。おそらく多くの関係者、ファンたちが、こう思ったに違いない。
“やっとここまできた!”
“やっと日本の新体操が世界に追いついてきたぞ!”
欧米の新体操関係者も魅了する、早川の美しい動き。
2人のうちで特に早川さくらは、その容姿の美しさで欧米にもファンが多い。黒髪、黒い瞳の美しい少女はまさに「ジャパニーズ・ビューティー」の典型として映るのだろう。演技においても、早川はとことんその美しい動き、体のラインで魅せる演技を磨いてきた。しかも単に技術を詰め込むのではなく、彼女ならではの美しさが香り立つような演技ができるのが、彼女の強みである。
今回の選考会でも、コンディションが決していいとは言えないなかでも、観客を魅了する「さくらワールド」を見事に描き出していた。試合後の会見では「日本での試合は緊張する」と海外組らしい発言をしていたが、つまりそれだけ「日本を背負っている」という自覚があるということでもあるのだ。ロシアへの派遣を受け入れたときから、「期待には応えなければならない」という覚悟はできていた。だから、日本の観客の前でこそ本当に納得してもらえる演技をしなければならない――その強い思いが、この日の早川の演技にはみなぎっていたように思う。