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セリエA4連覇目前+CL準決勝進出。
ユーベを束ねるテベスのカリスマ性。
posted2015/04/28 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
ユベントスが、スクデット4連覇に王手をかけている。
32節のトリノ・ダービーでは、2季連続EL出場を諦めないトリノにまさかの逆転負けを喫し不覚を取ったが、2位ラツィオとの勝ち点差を考えれば、遅くとも5月上旬には、通算31度目の優勝を決める可能性が高い。
得点力や堅牢な守備だけでは、連覇はできない。
王者ユーベにあって、他のライバルチームにないもの。それは、今季もMVP候補筆頭のエースFWテベスが発散する、強力なリーダーシップだ。
大きなケガをせず、90分間走り回ってゴールを奪い、チームに活力を与えるテベスには、ひと癖もふた癖もあるチームメイトたちが絶大な信頼を置く。“この男についていけば勝てる”と、キエッリーニやボヌッチのような曲者DFたちを心底納得させるには、それ相応の結果とカリスマ性が必要になる。
頼りになるFWとは、リードをもたらしてくれる者のことだ。
今月18日に2-0の完勝を収めたラツィオ戦で、テベスは17分に技ありのゴールを奪った。現在18ゴールで得点ランクトップを走るテベスによる、今季15回目の先制弾だった。ユベントスの10番を見ていると、世の中には口ばかり達者なFWがいかに多いか、考えさせられる。
プラティニやバッジョと比べても……。
気風の良いテベスは武骨な荒くれ者だが、堅物でもない。
ゴール後のおしゃぶりポーズや珍妙なロボットダンスは幼い愛娘に向けたものだし、ラツィオ戦で見せたユーモラスな雌鶏パフォーマンスは、11年前にボカ・ジュニアーズ対リーベルプレートの大一番で見せた曰くつきのもので、ユベントス・スタジアムを大いに沸かせた。
過去に“ユーベの10番”を背負ったプラティニやバッジョ、デル・ピエーロのようなレジェンド・プレーヤーたちと比べれば、テベスは粗野で優雅さに欠けるかもしれない。だがグラウンド内でのテベスの働きぶりは、先達の彼らに決してひけを取るものではないのだ。
フィジカルの強さはもちろん、ペナルティエリア近辺でボールを足元に収める技術や低い重心のドリブルからシュートに持ち込むテクニックは、セリエAの全フォワード中随一といっていい。技術に関していえば、テベスは職人肌の選手だ。