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セリエA4連覇目前+CL準決勝進出。
ユーベを束ねるテベスのカリスマ性。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/04/28 10:30
パンツの中にしこんだおしゃぶりでゴールパフォーマンス。そんな意外な一面も、テベスの人気の理由だ。
現役の最後はボカに戻ると公言。
名門クラブを渡り歩き、名声もタイトルもすでに手に入れているはずのテベスが今も謙虚で貪欲なのは、母国アルゼンチンへの思いがあるからだ。
昨年秋、3年ぶりにアルゼンチン代表へ復帰したテベスにとって、6月にチリで開催されるコパ・アメリカは、おそらく最後のメジャー大会だ。現在の好調ぶりを維持して、“セレシオン”へ再招集してくれた現代表監督マルティーノの恩義に報いねば、テベスの男がすたる。
男気に溢れるテベスは、現役生活の最後に、愛する故郷ブエノスアイレスの古巣ボカ・ジュ二アーズでプレーすることも明言している。
ユベントスとの契約は来シーズンまでだが、今年の2月に31歳になっても一向に衰えないテベスのパフォーマンスを見たボカ側が、あわよくば今夏の獲得を狙って、アルゼンチンとイタリア両国のメディアを使い、CLの準々決勝直前というタイミングでユーベ上層部へ揺さぶりをかけてきた。
シーズンの緊張が高まる時期に、喧噪を嫌ったテベスは「今は何も決めていない」と語気を強め、「俺のことで騒ぎすぎだ。まず、ユーベがどうなるかが先に語られるべきだろ」と雑音を断った。
「ユーベの主役」という顔をしない謙虚さ。
誰もが一目置く世界的ストライカーでありながら、ユーベでは昨年加わったばかりの助っ人であるという立場をわきまえ、テベスは決して主役面をしない。その謙虚さも、ユベンティーノたちが彼を熱烈に支持する理由だ。
もしCLで優勝するようなことがあれば、ビッグイヤーを置き土産に、助っ人テベスは潔くユーベを去るのではないか。
その場合に備えて、マロッタCEOは、すでにディバラ(パレルモ)やカバーニ(パリSG)、ファルカオ(マンチェスター・U)といった後継者候補たちをリストアップしている。ただし、誰が後釜に座ってもテベスほどのカリスマを発揮することは難しいだろう。
昔は、技術や決定力を持つ野獣のような選手はあちこちに大勢いた。テベスのように、職人肌とユーモアを兼ね備えながら、強力なリーダーシップを持つ助っ人FWはもはや絶滅危惧種かもしれない。
スクデット4連覇とレアル・マドリーとのCL準決勝は目の前だ。
ユベントスとテベスの大仕事を見逃してはならない。