サッカーの尻尾BACK NUMBER
最大の拍手は、イニエスタのために。
CL4強進出のバルサ、現在絶好調。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2015/04/22 11:30
カンテラからの生え抜きであり、バルセロナの全盛期から中心選手であるイニエスタ。ファンの彼に対する愛情と信頼にはやはり特別なものがあるのだろう。
バルサのサッカーが変わり、イニエスタも苦しんでいた。
イニエスタにとっては複雑なシーズンだ。10年以上に渡り共にCL準決勝の舞台を踏み続け、隣でプレーしてきたシャビはほとんどの試合でベンチに座っている。
サッカーが変わった。低い位置でボールを奪い、できるだけ早く前の3人に渡す――。今季の典型的な攻撃パターンだ。
得点シーンに絡む回数が減った。シャビ同様、イニエスタの持ち味も、このスタイルでは出しづらい。存在感が薄くなり、3枚看板の後方でどこか肩身が狭そうにパスを繋ぐイニエスタがいた。
それだけにファンは嬉しかったのだろう。この日のイニエスタには、かつて彼らを魅了したエレガンスがあった。数人に囲まれても、感覚的に抜け道を見つけ、クールにチャンスを演出する。その度に人々は大げさなくらいの拍手を送った。
イニエスタ自身、今季最高というネイマールの言葉にうなずく。
「今季最高のバルサ? 確かに状態はいいね。終盤戦に入るにつれ、少しずつ状態を上げていった。そうすべきだと分かっていたから」
これまでに何度も準決勝を戦う中で、チームがどこにピークをもっていくべきなのかをイニエスタは分かっている。彼自身の状態も上がりつつある。100%のイニエスタは、バルサがピークを迎える上で欠かせない存在だ。
負傷明けだったこともあり、出場はわずか45分間だった。しかしその時間でイニエスタが見せたプレーを、カンプノウの観客は堪能していた。心のどこかで、懐かしき時代を思い出していたのかもしれない。
メッシの負担を和らげるネイマールとスアレス。
2得点のネイマールも、終盤に向けてパフォーマンスを上げている。
春先から低調なプレーが続き批判も浴びたが、PSGとの2試合では3点を挙げるなど、CL準決勝進出の原動力になった。
リーガ、CL、国王杯を合わせると、今季通算30点目だ。
第1戦ではスアレスが、第2戦ではネイマールが躍動しネットを揺らした。ここ数年間、バルサは「メッシ頼み」といわれ続けてきた。メッシが攻撃の核であることは今も変わりないが、今季はその比重が減り、10番に偏っていた得点やチャンスは分散しつつある。