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“感情の爆発”が新記録の秘訣!?
水泳日本選手権、中高生たちに思う。
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byAFLO
posted2015/04/22 10:30
新記録の証明書を手に、ピースと満面の笑みで喜びを爆発させた今井月(左)と池江璃花子。彼女たちの“まっすぐさ”は競技にもプラスなのではないだろうか。
「うれしいほうが勝っているので、疲れは感じません」
最終日の午前中、50mバタフライ予選で中学新記録を出したあと、「最終日ですが、連日のレースの疲れはありませんか?」と聞かれたとき、池江は笑顔で応えた。
「記録が出てうれしいほうが勝っているので、疲れとかは感じません」
記録が出ることが楽しくて仕方がない――。
萩野公介も、記録が伸びなかった時期を振り返り、「子どものとき、いつまでも友達と遊び回っていたけど、疲れなんて感じなかった。楽しければ、疲れって感じないんですよね。だから水泳も試合も、もっと楽しまなきゃいけないんだって気づいた」と話していたことがある。
一昨年、腰痛で苦しみ抜いた入江陵介(イトマン東進)も、調子を取り戻した昨シーズンはうれしそうに笑顔でインタビューに答えるシーンが増えた。瀬戸大也は昨年のアジア大会で結果が残せなかったことに落胆を隠さず、逆に12月の世界短水路選手権400m個人メドレーでの優勝後には楽しそうにレースを振り返り、喜びをあらわにした。
若手選手たちの姿はベテラン選手たちにどう映る?
大人になれば、みな背負うものも大きくなっていき、悩みや苦しみが増えていく。選手たちも人前で感情をすべて表現するわけにはいかず、裏で悔し涙を流す者もいるし、あえて喜びを見せないようにする者だっている。だからといって、人前で自分の感情のすべてを抑制し、大人な対応をすることが正解というわけではないだろう。
今大会、自分の泳ぎ、記録に対して一喜一憂し、その感情を素直に表現する若手選手たちの姿は、ベテラン選手たちの目にどう映ったのだろうか。
リオデジャネイロ五輪を翌年に控えた今だからこそ、ベテラン選手たちにもう一度思い出してほしい。
自己ベストを更新したとき、ライバルに勝ったとき、目標をクリアしたとき。それらの瞬間が、どれだけうれしかったか。
逆に、どれだけ周りが良かったと誉めてくれても、ライバルに負けたり目標に届かなかったりしたときの悔しさ。そして、もう一度頑張ろうと誓ったときの熱い想い。
今大会は若手が見せる感情の素直さに心打たれる場面が多く、だからこそ、若手の彼女たちの泳ぎが印象に強く残ったのかもしれない。
様々な感情が入り組んだ日本選手権を終え、ロシア・カザンに向かう代表選手たちが4月13日に発表された。男子13人、女子12の合計25人の少数精鋭部隊のうち、世界水泳選手権初出場の選手は10人。若手もベテランも関係なく、ロシアの地では素直な喜びの感情が満ちあふれる姿を見せてほしいと、切に願う。