ストイコビッチが現役時代の自分を重ねたテクニック。

　スピードが武器だった柏時代を経て、玉田は名古屋に移籍して以降、どんどんテクニカルな選手というイメージを身にまとってきた。それには理由がある。

「当時、名古屋でテクニックのある選手は（藤田）俊哉さんや本田（圭佑）ぐらいで。自分が前線にいながらボールを多く受けるためには、ただ前で待ってスペースを突いていてはダメだった。だから積極的に顔を出してボールを受けて、タメも作って。自ずと、テクニックを前面に出すようになっていった」

　そして、'08年にドラガン・ストイコビッチ監督が就任すると、玉田は完全にチームの攻撃の中心を担った。攻撃で時間を作り、チャンスメイクもして、ゴールを狙う。「お前はJの中でもNo.1の技術を持っている」とピクシーが玉田に伝えたとおり、指揮官は現役時代の自分の役割を彼に重ねあわせていた。

「テクニックが一番なのは、間違いなく自分だよ」

　J2とはいえ、新天地のセレッソにも実力者たちは揃っている。フォルランやカカウといった世界の舞台で活躍してきた選手や、山口や扇原といった日本代表クラスのMFもいる。

　その中に、新たに入っていった玉田。

「勘違いされると嫌だから、これは書かないでよ」と言われたが、サッカーに愚直で素直な性格の彼が放った言葉だからこそ、穿った捉えられ方はしないだろう。玉田は、笑顔でこうつぶやいた。

「練習やっていてもみんなうまい。フォルランはやっぱりシュートがすごい。でも、テクニックが一番なのは、間違いなく自分だよ」

　大宮戦の先制点の場面。52分、前線に駆け上がりフィードを受けた丸橋祐介からゴール前中央にパスが送られ、そこに関口が走りこんできた。

　その瞬間、ペナルティエリア内に侵入した玉田が、相手DFラインと駆け引きしながらパスを呼び込む。関口がそれに呼応し、右足アウトサイドのワンタッチパスでボールを前に送る。パスは少し足元に入りすぎたかに見えたが、玉田は巧みにワントラップ。すぐにボールを前に押し出し、流れるようなプレーで冷静にゴールに流し込んだ。

　待望の移籍初ゴールは、玉田が「面白い攻撃を仕掛けたい」と話していた選手との合作で生まれた。それは両者のテクニックが生んだ得点でもある。

【次ページ】　「技術だけは、いつまでも錆びない」