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「技術だけは、いつまでも錆びない」
玉田圭司の2得点に詰まった“技”。
posted2015/03/18 10:45
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
千葉で生まれ育ち、プロデビューは柏レイソル。名古屋グランパスで自らの全盛期を迎え、日本代表としてW杯にも'06年と'10年大会に出場した。
今年から始まった、初めての関西在住。住まいの居心地の感想は“ベタ”ながらも、楽しげな印象だった。
「やっぱりたこ焼きだよ。本当においしい。どこの店でもうまく感じちゃう」
3月15日。J2第2節。セレッソ大阪は雨の長居スタジアムに大宮アルディージャを迎え、ホーム開幕戦を戦った。
1-1のまま、試合は残り1分で後半アディショナルタイムに入ろうとしていた。敵陣で獲得した直接FK。ボールが置かれたスポットにはブラジル人アタッカーのカカウと、玉田圭司が立った。
両手を腰に当て、相手の壁とGKを見る。キックの軸足となる右足を置く位置をしっかりと確認する。そこからゆっくりと5歩、後方に下がった。それほど助走に距離を取らない。そのすべてが玉田らしい、いつものルーティン動作だった。
名古屋時代からのチャントを歌ったサポーター。
主審のホイッスルが鳴り響き、カカウが先に動き出してボールを跨ぐように越えていく。そこに遅れて入り込んだ玉田は、渾身の左足を振り上げた。ボールは伸びるように速く、そしてゴールマウスの右上隅に吸い込まれるように曲がっていく。クロスバーを直撃し、ボールは真下へ。最後はラインの内側に弾んだ。
大歓声に応えるように、雨のピッチの上で玉田は両膝でスライディング。歓喜のガッツポーズに、後方から山口蛍や扇原貴宏といった若き桜の戦士たちが抱きつく。キックを譲ったカカウも上から飛びついた。起き上がった玉田を待っていたのは、ディエゴ・フォルラン。ハイタッチを交わし、ガッチリと抱擁した。
チームを今季初勝利に導いたのは、新たに背番号20を背負ったレフティだった。試合後、名古屋時代から継承されたチャント(応援歌)がセレッソサポーターから注がれた。新たなホームグラウンド、新天地・大阪で、仲間と観客に名刺代わりの決勝点。
この日は先制ゴールも決め、いきなり2得点のホームデビュー。玉田は、最高のスタートを切った。