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中島裕之獲得失敗は、阪神に福音?
若手育成に迷走した時代に終止符を!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2014/12/18 10:30
アメリカでは結局MLBの試合には1試合も出場できず、AA、AAAでの出場に留まった中島裕之。阪神には、獲得失敗を機に若手の育成に目配りをしてほしい。
ソフトバンクが英才教育を施した今宮健太の例。
あるスカウトによれば、ここ数年の阪神のドラフトにおける重点ポイントは遊撃手だったという。そこにはもちろん、鳥谷敬の後継者を探すという意味が込められている。阪神にとって、ポスト鳥谷の育成は積年の課題なのだ。
前出のスカウトは言う。
「毎年投手を探すことは当然のこととして、ここ数年は遊撃手、二遊間のポジションがテーマになっていたのは事実ですね。ソフトバンクが数年前に、川崎宗則がメジャーに行くのに合わせて今宮健太を単独指名して、ピッチャーでもあった彼を遊撃手として英才教育で育て上げた。外から見てても、スカウト冥利、編成冥利に尽きるという指名でしたよね。うちは選手が育っていないと言われますけど、欠けているのは、ああいう姿勢なのかもしれないです」
事実、'11年ドラフトは3位で二遊間を守れる西田直斗、'12年には2位で、甲子園のスター選手だった北條史也を獲得している。'13年には3位で大卒の陽川尚将、そして今年も近江高の植田海を5位指名した。
鳥谷のメジャー移籍交渉の行方は予断を許さないが、彼が残留しても移籍しても、阪神がチームの軸になる遊撃手を育てる必要があることに変わりはなく、今後5~10年というスパンで未来を考えるのがビジョンというものだろう。
中島は確かにトップクラスだが……。
阪神が獲得を目指していた中島はたしかに、日本トップクラスの内野手と評価していい。しかし年齢は鳥谷と1学年しか変わらず、将来性を見据えた補強とはいえない。中島のまじめに練習に取り組む姿勢と明るいキャラクターが、チームのプラスになることは間違いないだろうが、ここ数年たくさんの遊撃手を指名してきたことを考えれば、若い選手の芽を摘む可能性もあった。
ポスト鳥谷は、若手の中から育てていくのが王道なのだ。