5500kmダイエット挑戦記。BACK NUMBER
ついに始まったオーストラリア横断。
ダイエットより大切な、僕の命。
text by
横田健太Kenta Yokota
photograph byKenta Yokota
posted2014/11/28 10:30
難所だと思っていたナラボー平原を4回も横断したという自転車店のスタッフと一緒に。これで横断できなかったら僕がダメみたいじゃないか……。
「屋根の下では雨宿りしないこと」
偶然、屋根がある場所を見つけ、雨宿りを決め込む。雷が鳴り止むのをそこで待とうと思っていたのだが、雷が落ちるたびにこちらへ近づいてくることに気付く。このまま無事でいられるだろうか。念のため、携帯で雷の対処法を調べてみる。
「屋根の下では雨宿りしないこと。雷が落ちやすいです」
今の自分の状態ではないか。死にたくない、街に戻ろう。そう思った瞬間、自転車に積んでいた大量の荷物が突然崩壊した。後輪の上にある荷台が壊れ、荷物すべて落ちてしまったていた。これはもう雷にうたれるしかないな……と呆然としていると、この大雨の中、突如として赤い軽自動車が現れて、運転席のおばさんが何やら叫んできた。
「なにをやっているの! 街に逃げなさい!」
「自転車が壊れて荷物が運べないんだ」
「その荷物は私の車で運んであげるから! 街の途中のガソリンスタンドで会いましょう!」
体重を減らすより、命を守るので精一杯。
「なんだ? このおばさんは」と思いながらも、とにかく緊急事態ということで、彼女に荷物を預け必死にペダルを漕ぐことにした。午前中に転倒した事件が脳裏によみがえる。大雨で道路が濡れていてハンドルが取られ転びそうになる。時速35Km。必死に漕ぎ続けた。怖かった。夢中で10分ほど走ると、なんとかそのガソリンスタンドに到着した。
併設されたマクドナルドでおばさんとお茶をして、お礼を言い、自分で自転車の荷台を直した。どうやら、すぐ近くにキャンプ場があるらしい。今晩はそこに泊まろう。
体重を減らすというよりも、自分の命を守ることで精一杯。最初の2日間はそうやって過ぎていった。