REVERSE ANGLEBACK NUMBER
ブラインドサッカーの魅力と危惧。
見る者を圧倒する激しい“肉弾戦”。
posted2014/11/27 10:30
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
Moto Yoshimura
もう10年ほど前になるが、ゴールボールを見に行ったことがある。パラリンピックの競技にも採用されている視覚障害者のスポーツで、3人ずつの選手が鈴の入ったボールを相手ゴールに入れ合う。それを守備側は体を張って防ぐ。現場で見ると、鈴の音を聞き落とさないようにするための静寂と、ゴールを割られまいとして体を床に投げ出して防ぐ激しさのギャップが印象に残った。女子日本代表がロンドンで金メダルを取ったから、見た人も多いだろう。
今月、ブラインドサッカーの世界選手権を見に行った。同じ視覚障害を持つ人のスポーツで、選手が目隠しをして鈴の入ったボールを使うところも似ている。ゴールボールを見たことがあるので、あまり驚きはないだろうと考えていたのだが、全く違った。激しさ、タフさに大げさにいえば圧倒された。ある部分ではブラインドの付かないサッカーよりも激しい。肉弾戦といってもよい。
壁になっているタッチラインに、何度もぶつかる。
フィールドプレーヤー4人とGKで1チーム。フィールドプレーヤーはアイマスクをした目にハンデのある人だが、GKはハンデがないか小さく、アイマスクはしない。ほかにもうひとり、相手ゴール裏に立って声と音で指示を出すコーラーと呼ばれる役割がいて、ゴールポストを棒でたたいて位置や方向を知らせたり、コーチングをしたりする。
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ボールの中の鈴を頼りに静かにゆったりプレーするのかと思ったら、開始から「ドン、ドン」と派手な音が聞こえる。タッチラインが壁になっていて、そこにボールや体が何度もぶつかるのだ。
目が見えないので、ラインは自分で判断できない。頼りになるのは聴覚と触覚。まっすぐ伸びるタッチラインの壁は選手の格好の導き手になっているようで、ボールを奪うと壁際まで運んで、壁伝いに前進を試みる。相手も壁際に陣取って前進を阻もうとする。壁際の攻防が時に大きな音を立てる。これがホントの壁ドンだ!