野球善哉BACK NUMBER
ドラフト会議の“安全指向”に苦言。
スカウトの皆さん、出番です!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2014/10/23 08:00
2013年のドラフト会議では、松井裕樹、大瀬良大地、石川歩に第1回指名で競合が発生した。果たして今年は?
2010年、大野雄大一本釣りの秘話。
米村スカウトが優れているのは、情報収集能力の高さだ。
2010年のドラフトでは、大学ナンバーワン左腕の呼び声が高かった大野雄大を一本釣りした。
実は当時、大野の指名には懐疑的な見方が多かった。というのも、大野は大学4年秋のリーグ戦の登板を回避しており、左ひじを痛めているのではないか、という疑念が広がっていたのだ。
しかし米村スカウトは、大野のひじの状態がどの状態かの情報を集め、「それほど重症じゃない」と見抜き、2010年、澤村拓一(中大-巨人)との選択で揺れた当時のドラフトで大野を強く推したのだった。
「(大野は)けがのリハビリに数年必要だけど、うちにはいない強いボールが投げられる投手。おそらく、他球団は大石(達也、早大-西武)と斎藤(佑樹、早大-日ハム)に集中するから、大野が1位で指名されることはない。しかし、外れ1位では、残っていない。少なくとも阪神が狙うはずだ。獲るなら1巡目」
そう当時の落合監督にも進言し、見事一本釣りに成功したのだ。もちろん「澤村は1年目から10勝できるが、10敗する可能性もある投手」というスカウトの総合評価を加味しての判断だ。
「今の調子だけで決めるなら、スカウトはいらない」
スカウトには「発言すべき時」というのがあるのだ。
では米村スカウトは、今季についてどう見ているのか。
「競合するでしょうね。不作と言っているのは、早大の有原航平や法大の石田健大、明大の山崎福也らが軒並み調子を落としているから、そう言うんやと思いますけど、今の調子だけでドラフトの行方を決めるのなら、スカウトはいらないでしょう。
担当スカウトは、長い時間をかけて選手を見てきているわけやから、選手の何が悪くて彼らが調子を崩しているのか、分かっていないといけない。そして、獲得後にどういう風にもっていけば戦力になるか、というのを見抜かないといけない。上司の意見に、ハイハイと従っているだけではスカウトとはいえない」