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ジャマイカ戦は“不満の初勝利”か?
アギーレJの変革と香川の試行錯誤。
posted2014/10/11 11:50
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
試合前、ビッグスワンは一人の男にありったけの力で声援を送っていた。
激励の横断幕が揺れる。
「シンジ待ってた」「真司おかえり」「悔しさをバネに」
それは、アギーレジャパン初招集となった背番号10、香川真司に対する熱い視線と期待の表れだった。
ブラジルW杯で輝けなかったエースの悔しさを、無念を晴らしていくための第一歩。この日は香川に用意された舞台であるのだ、とビッグスワンに集うファンがあらためて教えてくれた。香川が主役にならなければならない試合なのだ、と。
アギーレジャパン3戦目にしての初勝利の意味。
結果は1-0。「チームが勝てたということが一番大事なこと」と本田圭佑が語ったようにアギーレジャパン3戦目にしての初勝利には十分な意味がある。あまり歯ごたえのなかったジャマイカ相手に多くのチャンスをつくりながら1点に終わったものの、勝ったことの「前進」のほうに意義を感じたい。だが残念ながら「香川真司の夜」にはならなかった。試合前の声援が、試合中に、試合後により大きなものとなって沸騰はしなかった。
前置きとして記したいのは、香川のパフォーマンスが決して悪かったわけではないということ。ハビエル・アギーレ監督も「真司は良かったと思う。彼だけでなくチーム全体が良かったし、指示したことをしっかりこなし、努力してくれた」と語っている。
彼は不慣れな左インサイドハーフに入り、前半はバランスを見ながら新しいポジションにまずは慣れようとしていた。相手が積極的なプレスをかけてくると踏み、チームはセーフティーに長いボールを使いながらこぼれ球を拾ってゴールに迫ろうとする。そのプランのなかで、彼も自分を出そうとした。