サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ジャマイカ戦は“不満の初勝利”か?
アギーレJの変革と香川の試行錯誤。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/10/11 11:50
香川は前半37分に相手のひじがあごに当たり、「頭がくらくらする」と一時ピッチの外に出た。
香川真司、前半は試行錯誤しながら。
流れのなかからチームが初めてシュートに持ち込めたのはその香川。15分に西川周作のフィードからの流れで、ロングレンジから左足でシュートを放った。鋭い一発はゴール左にわずかにそれたものの、この日の意気込みを感じさせるものだった。
ただ、チームの重心が低いとき、前を意識するよりも逆にボールをもらいに下がってしまうところは少々、気になった。左ウイングの武藤嘉紀と前のポイントで連係していく場面もなかなか出てこない。前半は試行錯誤しながらプレーしている印象が強かった。
途中から右インサイドハーフに回るようになり、右ウイングの本田を使いながら自分も活きようとしていく。そして後半に入ってからは「トップ下」のイメージに近くなった。
後半16分、長友からボールを受け取って左サイドからクロスを送り、武藤のヘディングシュートにつなげるなど“らしい”プレーが増えたのは事実。20分には自らも絡んだパス交換から、サイドの深い位置からのグラウンダーのパスをフリーで呼び込み、シュートを放っている(決めてほしい場面ではあったが)。本田も「真司も入ってきて、あそこでしっかりと起点になれるので安心して勝負どころに入って行けますし、得点には結び付けられなかったですけど、そこからいい形が何本かあったと思う」と香川に対する変わらぬ信頼を口にしたほどだ。
悪くはなかったが、「新しい香川」ではなかった。
悪くはない。
だが、「新しい香川」を見たわけでもなかった。
本田に接近して持ち味を出すプレーというのは、ザッケローニ時代から築き上げてきたこと。本田が左サイドに回ってからは長友を含めた左の連係で、より攻勢を強める。だが、ここが日本の武器であるのは分かっている。彼らとの好連係はなかば当然で、それ以外の香川の新境地を何か見ておきたかったという思いがあった。もっと飛び出していくプレー、もっとシンプルにするプレー、1発のチャンスを決めきる……その答えが何かは分からないが、不慣れなポジションではあっても香川なりの変化に対する強いメッセージを感じたかった。