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鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。
ランナーと非ランナー、共存の道は? 

text by

山田洋

山田洋Hiroshi Yamada

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photograph byMami Yamada

posted2014/10/11 10:40

鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。ランナーと非ランナー、共存の道は?<Number Web> photograph by Mami Yamada

鎌倉市内の天園ハイキングルートを走るランナー。ハイカーや家族連れでも賑わう(写真はイメージ)。

「レース前後に写真を撮って、しっかり調査を」

 トレイルランナーは、多様な価値観を持つ人々と、自然のフィールドを共有していくことは出来るのだろうか? 別の観点からこのスポーツを見つめる人に話を聞いた。

「私に言わせると、一般的にトレイルランナーは非常にマナーがいいですよ。ランナーが走った後をチェックするとね、綺麗な道しか出来ていない。踏み外しのケースもほとんど見られず、希少植物をはじめ、自然への影響はほとんど見られなかった。登山道を外れて植物を写真に撮る一部の登山者の方が、よっぽど道を踏み外して平気でいるくらいです。

 そして1つ言えることは、人が作ったトレイルはね、利用し続けなければ荒れてしまうんです。ハイカーも、ランナーもその意味では仲間です。自然は保全と利活用の両面で考えなければいけません」

 こう話すのは、山梨県鳴沢村にある富士山自然学校の渡辺長敬さん。40年以上にわたり環境省との仕事を通じて、富士山周辺の植生など自然について知り尽くしたプロ中のプロだ。ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)の大会事務局より、レース前後の植生調査を依頼されてもいる。

「私はね、UTMFの鏑木(毅)さんたちに言ったんだよ。レースの前後に写真を撮って、しっかり調査をして、毎年のようにデータを蓄積していってね、誰からも文句を言われないように自分たちの、トレイルランニング界としての資料を作りなさいとね」

“歩行エリア”を設けるという案も。

 鎌倉の場合を考えると、観光地特有の事情を理解し、時間帯を考え、マナーを徹底させること、また多くの人が訪れる古都鎌倉は適切なフィールドなのか、この点を協議会としても重要に捉えているようだ。

「素案段階ですけど」と前置きした上で「時間帯、曜日、シーズンなどを考慮して、ランナーにも歩いてもらう“歩行エリア”を設ける案があります」と篠さんは話す。歩行エリアの素案とは具体的には以下のようなものだ。

(1)天園ハイキングコースのうち、半僧坊―天園(峠の茶屋)の間
日時:通年/土、日、祝日 10時-14時

(2)峠の茶屋―獅子舞―二階堂東電変電所
日時:紅葉時期(11月3週―12月2週)、終日

(3)浄智寺―葛原岡神社
日時:通年/土、日、祝日 10時-14時

【次ページ】 全国初だった、トレイルランの地域組織設立。

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