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鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。
ランナーと非ランナー、共存の道は? 

text by

山田洋

山田洋Hiroshi Yamada

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photograph byMami Yamada

posted2014/10/11 10:40

鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。ランナーと非ランナー、共存の道は?<Number Web> photograph by Mami Yamada

鎌倉市内の天園ハイキングルートを走るランナー。ハイカーや家族連れでも賑わう(写真はイメージ)。

愛好家同士の話し合いで、鎌倉でのレースは中止に。

 そして8月、準備委員会は正式に「鎌倉トレイル協議会」として発足。問題となった大会の主催者である片山代表理事にコンタクトを取った。

鎌倉トレイル協議会の設立メンバー。

「ハイカーの多い鎌倉ではレース開催は厳しいのでは? と思い切って伝えてみたんです。すると、こちらの想像と違って『もう鎌倉ではレースはしません』と明言されたんですよ。『鎌倉市民が、しかもトレイルランニングに従事している市民の声なら尊重します』というニュアンスのことも仰られて、面談は終始和やかな雰囲気で終わったことを覚えています」(篠さん)

 その後、再び齋藤課長の元を訪れ、片山さんたちの意向を伝えると「本当ですか?」と大変驚かれたという。すぐさま齋藤課長は「協議会設立の記者会見」を打診した。

「今後、トレイルランをする側の人々に、一定のルールを守っていただくことを市と協議会とで進めていきたいと思っています。実は、私が片山代表理事と5月にお会いした際、『もうあなたの言葉は聞かない』と言われ、八方塞がりな状況にありました。協議会のメンバーが片山代表から“鎌倉でのレースはしません”との発言を得たとの報告を聞き、大変ありがたかったです」(齋藤課長)

 トレイルランの愛好家同士が話し合いをもつことで、適切な妥協点を見いだせたのだろう。

ランニングイベントと、規制派の間で続くトラブル。

 8月末、同協議会は、議会に陳情書を出した「ハイキングクリーン」と、同じく市内で環境保護などの活動をする「鎌倉風致保存会」のメンバーとの会合に出向いた。

「鎌倉トレイル利用のローカルルールの素案をお見せしたんですが、ハイキングクリーンの方の意見は『そんなんじゃ甘い!』と厳しいものでした。『何かが起きてからじゃ遅いんだ』ということをしきりに仰っていましたね。一方、鎌倉風致保存会の方は『現状は様子見しています』と一定の理解を示して下さいました」(篠さん)

 また同協議会メンバーに名を連ね、鎌倉市内を走る鎌倉トレイルツアーやマラソンランナー向けのジョギング教室など、日頃からランニングイベントを開催している「かまくRun」の代表・西堂路淳さんはある出来事を話してくれた。

「イベント中に休憩をしていたら、スタッフから『少し遠目から写真を撮ってる人がいる』と報告を受けました。お話してみると、ハイキングクリーンの方でした。私たちのイベントでは30人くらい集まることがありますが、大集団にならないようにグループに分けたり、トレイルを使う際のマナーの面も伝えたりと配慮はしていたのですが、迷惑をかけている場面を撮影しようとしていたようでした」

 鎌倉だけでなく、全国的にトレランに対する不信感を持つ人も少なくない。もちろん、マナーの悪いランナーがその原因になっているケースもある。トレイルランナーには、ハイカーだけでなく、隣接する住宅地などの地域住民への配慮も必要だろう。

 だが、不信感の中には誤解や偏見から生まれたものもあり、それが一部の報道によって加速している面もある。必要なのは慎重かつ、透明性のある議論だろう。

【次ページ】 「レース前後に写真を撮って、しっかり調査を」

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