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J1上位陣が次々と敗退した天皇杯。
意外と知らないカップ戦の意義とは?
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2014/10/11 10:50
今年元日の天皇杯決勝では、横浜F・マリノスが7度目の優勝を飾った。一発勝負ゆえのドラマ性は、これからも名勝負を生み出し続けることだろう。
イングランドでも、カップ戦への疑問は存在するが……。
ちなみに筆者は、本来なら勝つべきチームが勝てなくなることで「つまらない」「意味がない」とは全く思わない。
その理由は、ジャイアントキリングの主役となるチームとその地域にもたらされるポジティブな効果への期待である。
日本でJリーグ、ナビスコカップ、天皇杯と3つの大会が行われているのと同様、イングランドにもプレミアリーグ、FAカップ、リーグカップ(キャピタル・ワン・カップ)がある。
プレミアリーグは目下の世界最高リーグであり、一段レベルの落ちるFAカップやキャピタル・ワン・カップについて、存在価値を疑う声が現地にもある。賞金総額などの実利的なメリットにおいてもリーグ戦とは明らかな“格差”があり、トップクラブのモチベーションが上がらないのも無理はない。
4部クラブにとって「特別な夜」となったカップ戦。
しかしそれは、あくまで“メジャー”からの視点で、アップセットを起こそうとする“マイナー”からの視点は大きく異なる。
2012-2013シーズン、キャピタル・ワン・カップの決勝に駒を進めたのは、プレミアリーグに在籍するスウォンジーと、当時4部リーグに在籍したブラッドフォード・シティだった。
ブラッドフォードはトーナメントでウィガン、アーセナル、アストンビラを次々に下す快進撃を見せ、4部リーグ所属のクラブとしては51年ぶりとなる決勝進出の快挙を達成。当時このチームを指揮したフィル・パーキンソンが、準決勝直後に残したコメントが印象深い。
「特別な夜だ。試合前、我々は『自分たちが歴史を塗り替えよう』と言い合い、まさにそれをやり遂げた。このクラブのサポーターや選手、スタンドで試合を見守ってくれた選手の家族、すべての関係者にとって忘れられない瞬間だ。ブラッドフォード・シティの名が世界に知れ渡るなんて、最高だね」
ブラッドフォードは決勝で0-5と大敗を喫したが、弱小クラブの快進撃は地元のファンを興奮させ、飛躍的にサッカー熱を高めた。メジャーからの視点で「勝つべきチームが勝てないなんてつまらない」と思える結果でも、逆の立場のクラブと地域にとっては「特別な夜」になることがあるのだ。