野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
巣鴨のとある弁当屋の“ヤクルト魂”。
「仕事中に試合を見るために……」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2014/10/06 10:40
店主・峰岸さんの明るい笑顔。注文から提供まで非常にテキパキとスピーディーなため、野球中継をじっくり見ることはなかなか難しい。庚申塚店は都電荒川線、庚申塚駅からすぐの場所にある。
「仕事中にヤクルトの試合を見るために……」
どちらにしても、燃え盛るヤクルト愛を原動力にした強烈なメッセージ性を感じずにはいられない。峰岸さんに問い質してみた。
「え? いやーなんだろう。そういうこと全然何も考えていなかったな~。義務感とかまったくないですよ。簡単にいえば、自己満足が激しい店。好きだから勝手にやっているだけですよ。うん。まぁ、厳密にいえば、僕が試合を見たいだけ……みたいな感じなんですけどね(笑)」
ん……どういうことか?
「ですから、仕事中にヤクルトの試合を合法的に見るにはどうすればいいのかと考えて。そうだ、“144試合生放送中”と書いておけばなんて……ハハハ」
ん……何を言っているのか?
「いやだから、そう書いておけば、テレビでヤクルト戦を流しておいてもなんら不思議なことはないだろうと」
ん……。
「……いや、でもですね。これひとつ貼っておくことで、『僕もヤクルトファンです』って名乗り出てくれる人もいますし、ヤクルトファンでなくても『僕は巨人ファンです』、『私は阪神ファンでして』と、野球という共通言語をもとに話しかけてきてくれる。
みなさん、自分の球団について思うことがたくさんあるんですよね。弁当をここで食べながら試合をみていくお客さんもいますし、『神宮のチケットがあまってるから行かない?』と声をかけてもらうこともあります。この前も凄いベイファンの人が来まして、5時間ほど話していきましたけど……。そういう意味で、野球の力ってすごいなって実感はしているんですよ」
「神宮のスタンドは広島・阪神のファンばっかり」
つまり、巣鴨からスワローズを盛り上げようとしたわけでなく、ただ仕事中に中継を見たかっただけと。
「それだけじゃない! それだけじゃないですよ。僕の思いとしては、東京という町でスワローズをもっと盛り上げて行きたいことには間違いないですし、『巣鴨にもスワローズを応援している店があるんだぞ!』と声を大にして言いたいんです。
今年も神宮のスタンドのお客は広島・阪神のファンばっかりじゃないですか。選手はヤクルトという球団をどう見ているんだろう。そりゃ、応援してくれるファンで満員の環境で野球をやりたいに決まってる。でもそれをやらせてあげられない……そう思うとせつなくなるんです。
それに、巣鴨とヤクルトは意外と縁もあるんですよ。昨年のファン感謝DAYの『TOKYOマスコットCOLLECTION2013』では、地蔵通り商店街のすがもんが優勝して、今年の4月には神宮で始球式もやっているんです。つば九郎も毎年のようにつばさんぽで地蔵通り商店街に来てくれますしね」