野球クロスロードBACK NUMBER
大阪桐蔭、西武で育まれた積極性。
森友哉が進む「打てる捕手」の道。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/09/02 10:30
8月29日には不調の炭谷銀仁朗にかわって初のフル出場を果たした森友哉。西武の正捕手へ、そして日本を代表するスラッガーへの道は始まったばかりだ。
プロ入り前から森を支える“大阪桐蔭イズム”。
森が現在も貫いている信念は、大阪桐蔭時代に培われたものだ。
同校を率いる西谷浩一監督は、「初球から自分のスイングでバットを振れるかどうか」で選手の力量を見定めるという。
森には、入学当初からそれができていた。
選手本来の能力を生かす西谷監督の指導方針により個性を伸ばすことができた森は、高校通算41本塁打をマーク。「ナンバーワンスラッガー」の称号を得て、昨年のドラフトで西武から1位指名を受けた。
西武に根付く「個性を伸ばす」育成方針。
そして現在の森を形成する上で、入団した球団が西武だったことも大きな幸運だった。
清原和博、松井稼頭央、中島裕之、中村剛也、浅村栄斗――。西武で才能豊かな選手が早い段階から頭角を現すことができた背景には、連綿と続く球団の育成方針があるからだと言っていいだろう。
例えば、森にとって大阪桐蔭の先輩にあたる中村。田辺監督代行が二軍コーチだった時代から指導を受けてきた彼は、「比較的、自由にやらせてもらいました」と若かりし頃の自分と現指揮官との当時の関係性を説明する。
「高卒1年目とかだとなかなか打てないものなんですけど、それでも選手の長所を生かしてくれるというか、個人を尊重してくれていましたね。もちろんアドバイスはしてくれるんですけど、ぐちぐちと長く説明するんじゃなくて、的確にひとつふたつ言ってくれるような感じでした」
入団した時から長打という個性を伸ばすことができた中村は、1年目にファームで7本塁打を放ち、2年目にはイースタン・リーグ本塁打王。一軍でも'08年をはじめ、4度のタイトルを獲得するなど、球界を代表するスラッガーへと成長を遂げた。
森にも、中村に通じる部分がある。「コーチから具体的な技術指導はあったか?」と尋ねると、森は頭を振りこう答えた。
「二軍にいた時もそうですし、今もそうなんですけど、具体的に『こうしろ』みたいなことは言われてないです。とにかくもう、『(初球から)思い切って振れ』としか言われていないんで。自分としても、今はそのことだけを意識して打席に立っています」