セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「本田のゴールは攻撃の理想形」
開幕戦勝利でミランに満ちる一体感。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2014/09/01 16:30
プレシーズンから得点を量産していた本田圭佑が、開幕戦でもチームの今季初となる得点を決めた。「ミランの10番」がついにその真価を発揮しようとしている。
交代する本田を包んだ、敬意のこもった拍手。
後半に入ると、3トップはよりワイドに開いた。元ストライカーだった新監督インザーギは、選手たちに速攻を強く求める。
そして56分、新生ミランは再び攻撃を結実させる。
本田が中継点となって右サイドへ展開し、右SBアバーテが右サイドを突破。マーカーを鮮やかに切り返して放った低いクロスに、飛び込んだMFムンタリが左足で押し込んだ。
その8分後には、メネズが自ら奪ったPKを決めて、3-0とした。
自ら口説いて獲得したフランス人FWが嬉しそうにベンチへ駆け寄ると、インザーギは彼を懐へ抱え込み、ヤンチャ坊主を褒めるように情を込めて頭をはたいた。41歳になったばかりのインザーギは、セリエAで最も現役FWの気持ちを理解できる監督にちがいない。
不運なオウンゴールで1点を失った後、68分のMFエッシェン投入あたりから、ミランは間延びし、ラツィオにボールを支配されるようになった。
前半から失点するまでに見せた、丁寧なサッカーを90分間もたせられるかどうかが、今後の課題になってくるのだろう。
77分、本田はDFアルメロとの交代を告げられた。
グラウンドを後にする本田を、スタジアム中が温かな拍手で包む。仕事を果たした10番へ、ただひたすら敬意のこもった拍手だった。
晩夏の遅い夕陽が沈もうとする頃、ロスタイムに許したPKを新守護神ディエゴ・ロペスがセーブし、ミランは開幕ゲームを3-1の快勝でモノにした。
「攻撃の理想形が、本田の決めた1点目に現れていた」
初陣を終えたインザーギは、会見場に着席するなり「ふーっ」と一つ大きな息を吐いた。試合中の興奮状態がまだ続いているらしかった。
デビュー戦での初白星に「嬉しい」と述べたが、笑みはなく、表情は強張っている。彼ほど多くの大舞台を踏んだ選手はそうそういないが、それでも監督として帰ってきたサンシーロに格別緊張したようだ。
「労働者のように汗をかいてあくせく走った選手たちを褒めてあげたい。このチームは、ライバルよりも走らなければサッカーにならないんだ。3トップも守備に貢献しながら、(ボールを奪った直後の)リスタートからスピードを生かした攻撃のために、それぞれの持ち味を生かしてくれた」
そして「一つの攻撃の理想形が、本田の決めた1点目に現れていた」と何度も強調した。ラツィオの監督ピオリも敵将の立場から同様の意見を述べていた。
スタンドから観戦していた新戦力FWトーレスは、新しいチームメイトや監督をどう見ただろうか。