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ソルティーロが本田圭佑を超える日 特別編 「ロシアW杯までに300校。日本一のサッカースクールへ」
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byShigeki Yamamoto
posted2014/08/29 10:30
初ゴールを決めた本田からヒントを得る。
今年の4月、鈴木は本田に呼ばれ、イタリアに旅立った。ジェノアでのアウェー戦で、セリエA初ゴールを決めた本田と試合後に合流し、車中で交わした会話の中で、大きなヒントを見つけたという。
「本田選手のゴールシーン、GKとの1対1の場面について聞いてみたんです。僕ら指導者としては、この場面ではGKをしっかり見ろ、と言うのがセオリーです。でも彼にしてみれば、ちょっと違うらしいんですよ。GKを見るのは当たり前。大切なのはGKと最後まで駆け引きすることだ、と。それを間近に聞いたときに、これだ! と思いました。子供たちに、シュート練習で顔を上げて、GKをよく見ろというのか、GKと駆け引きをしようというのか。行為としては前者の方が正しいかもしれませんが、子供に選択肢を与える、自主的に判断するというソルティーロの理念に照らし合わせれば、後者の方が圧倒的に子供のフィーリングや能力を引き出せる可能性がありますよね。GKの位置を確認した上で、あえて見ないという選択肢もあるわけだから」
全国300校の先に見据えるのは海外進出。
鈴木自身プロを目指していただけに、本田が感じる選手としての感覚を指導の現場でも大事にしたいと考えているのだろう。静岡学園を卒業後、サッカーの特待生で東京農業大学に進学。2年生の時に選手生命に関わる大怪我をしたことで、指導者の道を選ぶことになった鈴木。
本人は「プロになってから、選手の道を断たれるよりは良かった」と振り返るが、サッカー選手としての夢が途絶えたことで、今のソルティーロでの夢があるのかもしれない。
「南アフリカW杯後のオフの自主トレで本田選手と出会ったことがきっかけで、ソルティーロの話をいただいた。彼の夢や理念に意気投合できたからこそ、僕もイングランドでFAライセンスを取得したり、ベンチャー企業で執行役員をやらせてもらい、ビジネスの流れを勉強して、今の仕事に生かしたいと思うようになれたんです」
2018年までに“日本一となる300校を運営”という目標は、ソルティーロの第一ステップに過ぎない。相当高いハードルのようにも感じるが、日本を超えて、世界的なクラブチームに発展させるという目論見が、その視線の先にあるようにも感じる。
「2018年の300校は第一ステップ。もちろん、その先の海外進出ということも視野には入っています。でもこの4年の中で当面は日本一ですね。今年5月にソルティーロカップを開催して、全スクールが参加できる仕組みで優勝を決めたのですが、そういった試みを年に4回くらいやりたい。バルセロナが全世界のスクールを一堂に集めて大会を開催するイメージですね」