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三重・中村監督の「全員出す」信念。
思い出作りではなく、勝つためにこそ。

posted2014/08/26 13:00

 
三重・中村監督の「全員出す」信念。思い出作りではなく、勝つためにこそ。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

背番号15の三宅穂昂は、伝令として何度もマウンドへ走った。三重の「全員野球」はスローガンではなく、本物だった。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

「全員出して勝つ。それがいちばんです」

 決勝前日、三重の監督・中村好治は意気込みを尋ねられ、そう語った。

 三重は準決勝までの全5試合で、登録メンバー18人中15人までがすでに出場を経験していた。

「ほぼ使えるんじゃないかな。みんながんばってきたのを知ってますから。技術うんぬんより大事なものがある。そういう価値観でやってきたので」

 これがたとえば大会序盤、ひとつの理想として語っているのならわかる。だが中村は甲子園の決勝という舞台で、本気であと3人使うつもりでいた。

「10打数3安打の選手より、10打数1安打でも使いたいと思う選手はいるじゃないですか。だから、そういう展開になればいいなと思ってます」

1点を追う展開で、初出場の選手を次々と。

 期待に反し、大阪桐蔭との決勝は1点を争う大接戦となった。

 ところが3-4と1点ビハインドの8回裏、中村が動く。そこまで大阪桐蔭の強力打線を何とか4点に抑えていた大黒柱の今井重太朗に代えて、まずは1回戦以来の登板となる右サイドハンドの森竜之助を投入。そしてワンアウト二塁のピンチを迎えたところで、今度は、地方大会でもわずか1試合(3回3分の1)しか投げていない、甲子園初登板の瀬戸上晶をマウンドに送ったのだ。

 ダメ押しを食らったら試合が壊れかねない展開だったが、中村は短く言った。

「抑えてくれると思って出しました」

 瀬戸上は最初の打者にいきなりデッドボールを与え心配させたが、後続をセンターフライ、レフトフライとそれぞれ打ち取り、役目を果たす。

 さらに9回表。ワンアウト後、2連続安打で一、二塁とし、一打同点という好機に、初戦の広陵戦で9回裏2死から同点の2点タイムリーを放った勝負強い2番・佐田泰輝に代え、やはり甲子園初出場となる鈴木颯馬を起用する。

「彼はあんまり目立たないけど、バッティングはいいものをもっている。打ってくれると思ったから使ったんです」

 しかし、その鈴木はあえなく空振り三振。続く打者もショートゴロに倒れ、三重が貫いた「全員野球」は終わった。

【次ページ】 「勝つことが大前提。でもだからこそ全員使いたかった」

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