野ボール横丁BACK NUMBER
三重・中村監督の「全員出す」信念。
思い出作りではなく、勝つためにこそ。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/08/26 13:00
背番号15の三宅穂昂は、伝令として何度もマウンドへ走った。三重の「全員野球」はスローガンではなく、本物だった。
「勝つことが大前提。でもだからこそ全員使いたかった」
18人中、最後まで出番がなかったのは伝令役の三宅穂昂(ほだか)だった。中村は弁解する。
「本当は彼も出したかったのですが、伝令でたくさん出たからいいでしょう」
三宅もさっぱりとした様子だった。
「自分だけ出られなかったことなんて、まったく気にしてません。伝令役でいっぱい使ってもらって、嬉しかったです」
もし、瀬戸上が打たれていたら――。
もし、佐田にそのまま打たせていたら――。
そう思ったが、中村は「瀬戸上も、鈴木も、彼らならやってくれると確信して出したので」と話すのみだった。
中村の采配は、単なる「思い出作り」ではない。
「勝つことが大前提です。でも、だからこそ全員を使いたかったんです」
この中村の信念が、三重の強さを支えていた。