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<'07年準Vバッテリーの蹉跌>
野村祐輔×小林誠司「衝撃の敗戦を超えて」
posted2014/08/11 11:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
深紅の優勝旗に手がかかっていた決勝戦の終盤、痛恨の逆転満塁被弾で最後の夏は幕を閉じた。あれから7年。それぞれドラフト1位でプロ入りしたかつての盟友は、あの敗北をどう受け止めているのか。野球人生の転機となった一戦の記憶を、二人が語った。
佐賀北の1番・辻尭人への3球目が、その回のひとつの目安になった。
やや低めのスライダーだった。広陵の捕手・小林誠司は、球の重さでミットが下にぶれないよう、上から拾い上げるような形でキャッチ。主審の手は、すんなりと上がった。
「ここはストライクなんだな、と」
2007年夏の甲子園の決勝は、ノーマークながら準々決勝で優勝候補の帝京を破るなど快進撃を続けていた公立校の佐賀北と、全国優勝3回を誇る名門・広陵の顔合わせとなった。広陵は過去に2度、夏の決勝まで進んでいるが、まだ深紅の優勝旗を手にしたことがなかった。
広陵が4-0とリードして迎えた8回裏。広陵のエース野村祐輔は、下位打線に2連続安打を浴び、1死一、二塁とされる。7回まで佐賀北打線をわずか1安打に抑えていた野村にとって、初めてのピンチだった。
「2本目のヒットを打たれたあと、声援でグラッときた。本当にグラウンドが揺れてるのかわからないですけど、そう感じました」
続く辻はカウント3ボール2ストライクと追い込んだが、計7球粘られ、最終的には四球で歩かせてしまう。
1死満塁――。
スタンドが一段と盛り上がる。小林は内心、「やばいな」と思っていた。