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W杯優勝を置き土産にして代表引退。
鉄人ラームは葛藤を抱えていたのか?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/08/06 10:40
170cm、66kgというドイツ代表で最も小さなフィリップ・ラームが、ピッチ上では誰よりも大きな仕事を涼しい顔で成し遂げる。
「ラームには調子の波がないんだよね」(内田篤人)
'11-'12シーズンから指揮をとっていたハインケス監督と、昨シーズンから監督を務めるグアルディオラ監督はローテーションを採用しているので出場試合数がある程度減ることになったが、'09-'10シーズンと'10-'11シーズンはすべての試合に先発出場を果たしている(あわせて100試合)。とりわけ、ドイツ杯とCLの両方で決勝に進んだ'09-'10シーズンの53試合すべてに先発出場したという記録は、ブンデスリーガの試合数が増えない限りは決してやぶられない記録だろう。
さらに付け加えると、一昨シーズンまではサイドバックを、昨シーズンはサイドバックと中盤の守備的なポジションを務めながら、どの大会でも一度たりとも出場停止処分を受けていないのだ。
ラームと同じくサイドバックを務める内田篤人も、以前ラームのことをこう評していた。
「ラームには(調子の)波がない。たぶん、彼の中ではきっとあるんだろうけど、俺らがわからないだけで。『今日は身体が重いな』とか、『調子が悪いな』というのはあるんだろうけど、それを感じさせない。すごいね」
内田の言葉通り、常に安定した力を出せるというところに、ラームがトップレベルで活躍することが出来ている理由があるのだ。
怪我での欠場が増えたことが、彼の心境を変えた?
ただ、そんな彼も一昨シーズンから少しずつ変化が出てきた。'09-'10シーズンから11-'12シーズンまでの間は怪我で練習を休んだことはあっても、怪我が理由で試合に出られなかったことは一度もなかった。
ところが、'12-'13シーズンには怪我で1試合に欠場、昨シーズンは怪我で6試合も欠場している。
これは筆者の推測にすぎないが、並の選手に比べればわずかなものに見える、怪我によって欠場した試合は、ラームにとっては多すぎるものだったのではないだろうか。
FIFA公式マガジンでのインタビューで代表引退についての話題の中で、彼が語ったこんなフレーズが頭をよぎる。
「僕はもう、30歳だからね」