プロ野球亭日乗BACK NUMBER
オールスターで考えるメディア論。
もっとちゃんと「野球」が観たい!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/07/25 10:50
意図を込めた器用でオールスターの2試合制に意味を与えた伊東勤、原辰徳両監督の功績は大きい。
演出過多に、くだらないインタビュー。
今回のテレビ朝日のオールスター中継にも、ゲストにSMAPの中居正広さんが入り、解説の工藤公康、古田敦也両氏と3人で放送は進められた。中居さんが入ることは(制作者の演出として)別に構わないのだが、一つ一つのプレーの解説は、やはり工藤、古田両氏の分析をもっとじっくりと聞きたいというのが本音だった。
入れ替わり立ち替わりで出場した選手がブースに呼ばれてインタビューに答えていたが、その間はグラウンドのプレーはおざなりで、ただ画像を流しているだけという状況が多かった。その上興を削いだのは、そのインタビューがあまりにくだらない、はっきり言って幼稚な質問ばかりで聞くにたえなかったことである。
もちろん現場に立つ者として、番組を作っているテレビマンたちの苦悩も分からないわけではない。グラウンドの映像だけを流していていいのか? ワンサイドゲームになったときに、視聴者にいかにサービスができるのか? そういうことに頭を悩ませ、何かを仕込んでおかなければならないという、制作者としてのサービス意識の結果であることも理解できる。
あちこちで“オワコン”と言われるプロ野球中継。
ただ、一つだけはっきり言えることがある。
野球ファンの思いはただ一つ、もっとちゃんと「野球」が観たい――それに尽きるということだ。
もはやあちこちで“オワコン”と言われるプロ野球中継。今年のオールスター2試合のテレビ中継の視聴率は第1戦が9.7%、藤浪、大谷の投げ合いで注目された第2戦でも10.5%と、ゴールデンタイムの最低ラインと言われる13%に届くことはなかった。
オールスター戦を1試合に限定したからといって、視聴率が15%を越えるともまったく思えない。そういう意味ではオールスターを含めた野球中継は世に言われるように“オワコン”なのだろう。
しかし、毎日3万人、4万人の観客を動員し、日本シリーズやWBCなどでは30%近い視聴率を叩き出すプロスポーツは、現状の日本ではやはり野球以外にはないのも確かである。ファンの「野球」を観たいという欲求が、プロ野球を支えている。それは事実なのだ。