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「つなぐ」も「決める」も自由自在。
西武・渡辺直人、2度目の充実期。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNanae Suzuki

posted2014/07/14 16:30

「つなぐ」も「決める」も自由自在。西武・渡辺直人、2度目の充実期。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

主に2番打者として出場し、7月13日時点で50試合以上出場選手の中ではチーム1の打率を誇る渡辺直人。移籍を繰り返してきたジャーニーマンは、西武でまた大きな花を咲かせている。

開幕前、渡辺はファーストチョイスではなかった。

 今ではチームになくてはならない存在になっている渡辺だが、シーズンの開幕当初、誰が渡辺の活躍を予見しただろうか。少なくとも筆者はその一人ではなかった。

 開幕前、移籍のイメージについてのコラムを書いた時のことだ。筆者は渡辺から移籍についての想いを聞かせてもらいながら、今季彼が置かれた立場は非常に厳しいと捉えていた。どのポジションにおいても、渡辺はファーストチョイスの選手ではなかったからだ。それでも「レギュラーを狙っている」という言葉には決意を感じたが、さほど低い壁だとは思えなかった。

 今になって思えば、それはビッグマウスでもなんでもなく、彼なりに秘めた思いがあったのだ。渡辺は言う。

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「確かに、若い選手が多いチームであると思います。でも、(西武は)チャンスはもらえるだろうという雰囲気を感じていました。しっかり準備をして、その時に結果を残そうと思っていた。やっぱり、スタメンで試合に出たいですからね」

「ミスしても次がある選手ではない」

 2010年まで在籍し、レギュラーだった楽天の頃と比べると、昨季までの渡辺は、明らかに苦しんでいた。2011年に金銭トレードで横浜に移籍し、右の内野手が少なかった横浜にとっては貴重な戦力になるはずだったが、若手路線へ切り替えたチーム事情の中、年を経るごとに渡辺の出場機会は奪われた。

 そして昨季の途中、トレードで西武に移ってきた。「(DeNAでは)チャンスをもらえる感じではなかった。そこは(こっちとは)違っていました」と渡辺は振り返っている。

 チャンスは必ず来るという高いモチベーションと、後がないという危機感。そのふたつが彼を強く支えていたという。

「きついのはきついです。僕の場合、チャンスがあるといっても結果を出していかないといけないし、一度ミスしても次がある選手ではない。今年はシーズン前からその気持ちだったのにキャンプで怪我をして、シーズンに入ってからも怪我で離脱した。ホント危機感ですよね。

 でも、その危機感と戦っているのも楽しかった。大切にしているのは準備。調子が良くても悪くても、いい準備をしていたら後悔はしない。もちろん結果が悪い時もあるんですけど、自分であれをやっておけば良かったって思いたくないので、どんな起用法でも、すべて受け入れられる準備だけはいつもしておきたい」

【次ページ】 若手の台頭、難しい打順という困難を「楽しむ」。

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