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マンオブザマッチにGKが12回選出!
今大会は守護神のW杯になるのか?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2014/07/12 10:30
ドイツがディフェンスラインを高く設定できるのは、裏のスペースをノイアーがカバーしてくれることへの信頼があればこそ。カーンも実現できなかったW杯制覇は、守護神がメッシを止められるかにかかっている。
ゴールキーパーにも、国や大陸のスタイルがある。
それぞれが持ち味を発揮したわけだが、彼らが活躍できた理由として小島さんが挙げた要素は、今大会でのトレンドともリンクしている。
「全体的にGKの活躍が目立ったのは、チームとして守備に重点を置いているか、元々守りに強みを持っているチームだと感じました。チーム全体で守らなければならない場面を的確に判断して、最後の砦としてのタスクをこなす。そんな準備をする姿勢があったのが大きかったのではないでしょうか。
例えば巧みなポゼッションサッカーを繰り広げたドイツですが、元々守備を生真面目にこなす国ですからね。また今回はボールを支配しようと試みたスイスも、本来はディフェンスの良さが特徴のチームです」
そしてもう一つポイントに挙げたのは、その国や大陸に根付いた“スタイル”だった。
「ナイジェリアのエニェアマは決勝トーナメントのフランス戦こそ失点につながるミスをしてしまいましたが、高い身体能力を見せつけました。これはアルジェリアのエムボリにも共通するアフリカ勢の強みです。オチョアやナバスは身長・体重ともにサイズがあるわけではありませんが敏捷性でカバーする、中米らしい守護神です。相手アタッカーとの駆け引きに長けた南米勢、サイズの大きさで存在感を放つ欧州勢も含めると、各大陸の特徴を強く感じました」
大会最優秀選手にノイアーが選ばれることも……?
GKが実力を発揮しきった今大会、これを象徴する出来事が起こるとしたら、それはゴールデンボール(大会最優秀選手)だろう。
現時点でゴールデンボールの候補選手を考えた際、決勝進出を果たしたノイアーが有力候補のひとりであることは想像に難くない。
ドイツが組織的かつ合理的、そして破壊的な攻撃を仕掛ける中で、メッシを軸にしたアルゼンチンの乾坤一擲の一撃をノイアーが防ぐ――。'02年日韓大会のカーン以来となるGKでのゴールデンボール受賞を果たし、そのカーンが果たせなかったW杯も勝ち取る。
ノイアーが2つの頂点を取った時、「ブラジル大会は守護神の大会だった」という印象は確固たるものになる。