ブラジルW杯通信BACK NUMBER
開催国ブラジルの“異常な精神状態”。
ベスト8のトラウマと陽気な難敵。
posted2014/07/03 16:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
コロンビア旋風は、王国をも飲み込むか。
4日から始まる準々決勝で、コロンビアとブラジルが激突する。
代表史上初のベスト8進出で勢いにのる“カフェテロス”と、6度目の優勝を目指すセレソンによる南米勢対決が、大会のハイライトの一つになるのは間違いない。
コロンビアは、陽気なステップで大会を魅了している。
個々の能力が噛み合い、スピードとフィジカル、テクニックと戦術を高いレベルで調和させる彼らは、強敵ウルグアイとの決勝トーナメント1回戦を2-0で完勝した。
通算5得点を挙げ、グループリーグ最優秀選手に選出されたMFハメス・ロドリゲスは、今や大会の寵児となった感すらある。ゴールを決めるたびに、照れ笑いを浮かべながら、チームメイトたちとステップを披露する。
マイケル・ジャクソンの「スリラー」をアレンジした指南役は、DFアルメロだ。観る者にまで活気を与える彼らのサッカーの根底には、陽気さがある。彼らのサッカーは、王国の神様ジーコですら虜にしてしまった。
「今大会、最も私を楽しませているチームはコロンビアだよ。次の試合は私がプレーしたいぐらいだ」
7月2日はコロンビアにとって特別な日だった。
ステップは軽妙、しかしブラジルとの決戦にかけるチームの決意は重い。“カフェテロス”は、浮ついたお調子者集団ではない。
準々決勝の行なわれるフォルタレーザへ入った翌7月2日は、コロンビア代表にとって特別な日だった。
'94年のアメリカW杯で、敗退に繋がる自殺点を献上したDFアンドレス・エスコバルが、大会後に射殺されてからちょうど20年が経った。彼の命日にあたる2日、サッカー協会も国民も、そして代表選手も全員が喪に服した。