ブラジルW杯通信BACK NUMBER
ロナウドが試合後に口にした“諦め”。
ポルトガル積年の課題は解決されず。
posted2014/06/24 10:30
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
それは最後のポルトガルの攻撃だった。
右サイドのクリスティアーノ・ロナウドにボールが渡ると、彼はファーサイドへクロスを上げた。逆サイドから飛び込んでくるバレラの頭にぴたりと合ったボールは、ネットに吸い込まれていく。
ロスタイムの同点ゴール。
しかし絶妙のアシストをしたロナウドは、ぴくりとも動かなかった。手を叩くことも、ガッツポーズをすることもなく、うつむいてゆっくりと自陣へと戻っていく。
数秒後、試合終了のホイッスルが鳴ると、彼はキャプテンマークを外し、ピッチ上の誰よりも先にロッカールームへと消えていったのだった。
ポルトガルは米国に勝てなかったことで、グループ突破の可能性がほぼ消えることになった。最終戦でガーナに勝つことが最低条件。さらには米国対ドイツの試合が引き分けに終らず、その試合の敗者を得失点差で上回らなければならない。ポルトガルの得失点差は-4だ。ドイツと米国はそれぞれ+4と+1である。ドイツが米国に大勝し、ポルトガルもガーナに大量得点で勝てば2位突破もあるが、いずれにせよ可能性は非常に低い。
試合後、諦めに似た表情だった選手たち。
試合後の選手にあったのも、諦めに似た暗い表情だった。
先制点を決めたナニは悔やむ。
「試合にはいい形で入ることができたんだけど……」
相手のクリアミスからナニが押し込んだのは前半5分だ。ポルトガルにとってこれ以上ないスタートだった。
しかしそこからが続かない。中盤でボールが落ち着かず、米国に完全に走り負けた。米国は度々ポルトガルの左サイドを突き、チャンスを掴んでいく。